研究課題/領域番号 |
23730841
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
金子 浩一 宮城大学, 事業構想学部, 准教授 (10367419)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高大接続 / 商業高校科目 / 経済理論 / 教育学 / 新学習指導要領 |
研究概要 |
本研究は,新学習指導要領の導入に伴う変化も勘案し,商業高校専門科目,普通科公民科目,および大学の経済・経営系科目との接続性を確認しながら,文献調査や実態調査を進めていく。平成23年度は,現行の学習指導要領下での教科書を中心に文献調査を行った。また,新学習指導要領下において,教育現場で新たに教授されることになると予想される学習項目について検討した。 まず,現行指導要領下の教科書について,商業科専門科目と普通科「政治・経済」「現代社会」の経済分野との間に,どのような関連性があるか確認した。たとえば,商業科「国際ビジネス」においては,「信用創造」や「比較生産費説」など,普通科公民科目でも掲載されるモデルが確認される。また,公民科目では扱われない内容として,「均衡国民所得(45度線分析)」や「競争戦略」に関する説明もある。また,商業科「マーケティング」においても,「需要の価格弾力性」や「右上がりの需要曲線」など,公民科目では記載されない項目がある。これらは,大学の経済学や経営学で学習される内容であり,高大接続上の優位性が確認される。 平成25年度に導入される新学習指導要領下では,商業科の専門科目は17科目から20科目に増加する。たとえば,新設科目の「ビジネス経済」では,「所得効果及び代替効果」「限界効用の逓減」などの用語が確認される。このことより,これまで高校では学習されなかった「効用関数」「無差別曲線」などの概念の教授が必要になると予想される。 平成23年度は,新学習指導要領移行に伴う変化を確認する上での基礎的な文献調査を中心に行った。研究成果としては,経済教育学会2012年春季研究集会で口頭発表を行い,また東北経済学会の『東北経済学会誌』に論文を掲載した。これらの成果をもとに,平成24年度には高校へのインタビュー調査やアンケート調査を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進行がやや遅れた主な要因は,新学習指導要領(平成25年度移行)対応の教科書について,平成23年度中には検定の過程にあり,見本を入手できなかったことである。このことにより,特に文献調査と訪問インタビュー調査の実行に遅れが生じた。 まず,文献調査に関しては,新学習指導要領対応の教科書に関する調査ができずに,平成24年度に移行することになった。これらの教科書が計画通り購入できなかったため,書籍費用などの支出も予定より少額となった。新旧での比較を行うためには,現行要領対応下での最後の教科書(平成24年度版)からの相違を確認する必要があるためである。 また,これにより,高校教諭などへの訪問インタビュー調査も,平成24年度に実行することになった。平成23年度中には,高校の現場でも実際の新要領対応の教科書を入手しておらず,調査したい内容のすべてを質問しきれないためである。インタビュー内容の資料整理の補助を学生RAに依頼する予定であったが,これも平成24年度へ移行することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,計画が遅れた要因は新学習指導要領下での教科書が入手できなかったことであるが,これは平成24年度に入れば見本などで少しずつ確認できるようになる。そのため,遅らせていた高校などへのインタビュー調査も進めていくことができる。当初の計画通り,宮城近郊に限らず,全国のいくつかの地域の商業高校を中心に訪問調査していく。別の研究で中学公民科目に関する調査を行った際にも,商業(金儲け)のトピックなどで,関西と関東で生徒の関心に隔たりがあることなど確認しており,地域の偏りが出ないように調査することは重要である。これにより,旅費が多く必要になる。 また,インタビュー調査を行えば聞き取り内容などまとめることになり,さらにアンケートの質問項目の作成につながっていく。これらの資料整理の際には学生RAの研究補助およびその謝金が必要になる。また,インタビュー調査の際にも,受け取りが可能な相手には謝金を支払うため,平成23年度に比べ謝金の支出も増えてくる。 なお,平成23年度の支出額が予定より少なかった理由は,前述の書籍費・旅費・謝金の移行以外にもある。パソコン,プロジェクタなどを,当初予定より低価で購入して節約できたためである。今回の助成では,審査前の申請計画に比べ3割ほど予算が縮小しているので,これらで節約できた研究費は,訪問調査の旅費等を中心に充て,調査の充実を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費使用は,文献調査のための書籍費,インタビュー調査や学会発表のための旅費,研究協力者への謝金,アンケート調査のための郵送費に大きく分類される。 まず,文献調査では,旧要領下での最後の教科書(平成24年度版),新要領下での最初の教科書(平成25年度予定版)を購入していくことになる。また,各種資格試験や大学の経済・経営系科目との接続性を確認すべく,入門レベルの教科書・参考書を購入する。 旅費では,遠方の高校訪問調査に際し,九州圏,関西圏,関東圏などへの出張を予定している。学会発表では,9月の経済教育学会(明治大学開催)で関東へ出張する。また,平成23年度に上海で日本初の高等学校が設置され,平成24年度には三つの大学と連携した大阪市立大阪ビジネスフロンティア高等学校が設置された。これらの新設は,本研究計画を最初に策定した平成22年度には想定していないことであった。高大接続教育を意識した商業高校や情報の少ない海外日本人高校での新学習指導要領への対応なども調査の必要性が高く,可能であればインタビュー調査していきたい。 また,研究協力者への謝金も必要である。前述の訪問調査での知識提供者への謝金,および資料整理の補助を行う学生RAに対する謝金である。 最終的には,約700校の商業高校へのアンケート調査を質問紙により実施する。その際には,往復の郵送費が必要になる。
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