本研究では,平成25年度に正式移行が始まる新学習指導要領(高校)により,経済・経営系科目の内容がいかに変化するかについて,商業高校科目を中心に考察した。また,高等学校への訪問調査・アンケート調査を通じ,高大接続教育に関わる影響について事前に検討した。 平成23年度は,特に旧課程(平成24年度までの課程)の教科書を中心に調査し,学習指導要領の変化も踏まえながら,大学の経済・経営系科目との接続性について調べた。たとえば,商業科「国際ビジネス」では,「45度線分析」や「競争戦略」など,普通科「公民」では扱われない内容も含まれ,高大接続教育において優位性をもつことが判明した。 平成24年度は,新課程(平成25年度以降の課程)の教科書見本も一部閲覧できるようになったため,教科書内容に基づく新旧比較も進めた。たとえば,新旧課程において同名称の商業科「マーケティング」では,「完全競争市場」の補足説明が省略されたり,「マズローの欲求の階層構造」の図が新たに掲載されたり,細かい点において変化が確認された。これらの内容は経済教育学会で発表し,論文も学会誌に掲載予定である。 また,高等学校や大学への訪問調査では,実際の授業実態や入試制度に対する見解などについてインタビューを行った。商業高校から経済・経営系学部への進学の場合,商業科「簿記」などは既習部分を大学で学習し直すことになり,逆に普通科「数学II」などは新たな学習が必要になるなどの問題があることが,高校・大学双方から聞かれた。 これらの考察をもとに,全国の商業高校645校に対してアンケートを行った。230校からの回答を得て,新課程で予定されるカリキュラムの状況や新設科目での教えにくい項目などについて分析を行った。たとえば,新設科目の「ビジネス経済」と「商品開発」については,いずれも半数程度の学校でカリキュラムに配当予定であることがわかった。
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