研究課題/領域番号 |
23730843
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中山 京子 帝京大学, 文学部, 准教授 (50411103)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 太平洋地域 / ポストコロニアル / マリアナ諸島 / グアム / 先住民 / 国際理解教育 |
研究概要 |
本研究では、従来の太平洋地域をテーマとした学習活動について、ポストコロニアルな視点からの検討を通してその問題点を示し、グローバル時代におけるポストコロニアルな視点にたった太平洋学習の意義を明らかにし、教材を開発し授業実践を行い、意義を検証する。調査、教材開発を通して、太平洋の中でも植民地支配の歴史や日本人移民の歴史、現在のツーリズムなど日本との関わりの深いマリアナ諸島地域を中心とし、博物館専門員や地域活動家、行政関係者、教育学者、文化人類学者との連携のもとに、偏りのない理解を深めるための視点を得るとともに、ポストコロニアル教育学の基礎的な理論を構築する。 1年目の当該年度は、文献資料の収集とフィールドワークによる基礎取材を行なった。まず、太平洋地域学習に関する先行実践、ポストコロニアル教育学、マリアナ諸島の先住民チャモロと日系移民に関する文献の収集を行った。同時に、マリアナ諸島およびハワイでのフィールドワークを行い、資料収集の他、チャモロ人・ハワイ先住民・日系人へのインタビューを実施した。地元の人々の協力を得て先住民の米軍基地内の私有地の見学、従軍慰安婦に関する聞き取り、ツーリズム産業と経済状況に関する聞き取り、タヒチからハワイ入植の物語などの聞き取りを行なうことが出来た。こうした文献収集と人々の生の声は、従来のステレオタイプな南の島の描き方ではない、ポストコロニアルな視点を反映した教材開発への基礎資料としての意義がある。マリアナ諸島に関しては、基礎資料の整理を進めた。 また、国内外の研究協力者との日常的なメールによるコミュニケーションに加え、直接的協議が必要な場合は訪問して議論を深めた。太平洋地域の教材開発に関心を持つ教師が集まる研究会を開催し、調査の妥当性や教材化への指針について協議をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)太平洋地域学習の先行研究の分析を通してポストコロニアルの視点からの問題点を明らかにし、授業実践をする研究協力者とともにマリアナ諸島で調査を開始し、教材化への資料収集、意見交換を行いながら、教材化に必要な要素を抽出すること、(2)ポストコロニアル教育学の理論を学び、太平洋地域学習へのポストコロニアル理論の導入の視点について明らかにすること、の2つを目標とした。 研究目的に沿ってマリアナ諸島(グアム、サイパン、ロタ島)およびハワイでの調査活動は順調に展開でき、聞き取りによって新たな知見を得ることができた。調査で得た成果は部分的に執筆中の著書原稿に反映させることが出来た。また、太平洋歴史協会の協力によってハワイでの調査を活発化させることができた。また、教材づくりについては、研究協力者と「太平洋地域学習懇話会」を数回開催し、教材開発やフィールドワークに向けての検討を行なった。ポストコロニアル理論に関する書籍などの入手も行なった。 補助金の7割支給の後、残り3割分の見通しが明確になるのを待った結果、ポストコロニアル教育学の専門家であるサンフランシスコ州立大学のDavid Hemphill博士を訪れて講義を聴講する計画をたてるタイミングを逸してしまった。 以上から、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
資料の収集を継続しながら、収集した文献の精読および分析を行う。文献をもとにポストコロニアル教育学理論のレビュー、整理を行い、太平洋地域学習に当てはめることができる視点を抽出し、ポストコロニアルな視点にたった太平洋地域学習の構想を行う。 また、フィールドワークで得たデーターやインタビュー記録を整理し、教材化のための準備を行う。継続して行なうフィールドワーク先として、日本(人)と歴史的・ツーリズムなど関係が深いマリアナ諸島とハワイを念頭においているが、調査先との調整や予測される効果によっては、他地域へと変更する可能性も検討する。太平洋間を移動する人や文化の流れは大きく、こうした移動がもたらすものとポストコロニアルには関係性があると考えるからである。特に日本の開発援助や観光産業と太平洋地域のコロニアリズムについて調査をしたいと考えている。 そして、研究中間報告を研究会や学会の研究大会において発表をし、広く意見を求め、研究の妥当性を検討することとする。また、紀要などに論文として部分的にまとめるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度内に不必要に使用しきることを控えたことによって、わずかに次年度に使用する額があり、研究図書購入など、研究に効果的に次年度に活用する。 引き続き太平洋地域においてポストコロニアルの視点からフィールドワークを行い、教材化に有効な資料や証言記録を蓄積するために、主に研究調査旅費および関連する文献の購入などに研究費を充当することを予定している。
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