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2012 年度 実施状況報告書

ポストコロニアルの視点にたった太平洋地域学習の教材開発

研究課題

研究課題/領域番号 23730843
研究機関帝京大学

研究代表者

中山 京子  帝京大学, 教育学部, 准教授 (50411103)

キーワード国際情報交換 / ポストコロニアル / 太平洋地域 / マリアナ諸島 / 国際理解教育 / 先住民 / 日系
研究概要

本研究では、従来の太平洋地域をテーマとした学習活動について、ポストコロニアルな視点からの検討を通してその問題点を示し、グローバル時代におけるポストコロニアルな視点にたった太平洋学習の意義を明らかにし、教材を開発し授業実践を行い、意義を検証する。調査、教材開発を通して、太平洋の中でも植民地支配の歴史や日本人移民の歴史、現在のツーリズムなど日本との関わりの深いマリアナ諸島地域を中心とし、博物館専門員や地域活動家、行政関係者、教育学者、文化人類学者との連携のもとに、偏りのない理解を深めるための視点を得るとともに、ポストコロニアル教育学の基礎的な理論を構築する。
2年目の当該年度は、先住民と日系人の視点を組み合わせた教材開発を研究協力者と行うこと、1年目に不十分であった調査の補充調査を行いながら、教材の妥当性について、日本国内だけでなく、現地教育現場での使用の可能性についても協議し、試行実践を開始することにあった。そこで、グアムを中心に、元グアム大学教員であり劇作家でもある日系のP.オネデラ氏や、先住民舞踊家F.ラボン氏、NGO団体太平洋歴史公園(Pacific Historical Parks)の協力を得ながら研究を進めた。グアムの日系人の歴史に関するグアムにおける展示への日本語翻訳の協力、大学生を対象としたグアムスタディーツアーを開始点としたマリアナ諸島の先住民の舞踊「チャモロダンス」の教材開発研究、戦争をテーマにした博物館の日本人来館者を対象としたワークシートの開発研究を展開した。
また、別の研究資金による研究と連携させ、本研究テーマの視点をもち小笠原諸島の調査に着手した。ポストコロニアルな視点で太平洋地域学習を考える時、国内の事例として小笠原の歴史や状況は教材として意義があると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

グアムにある、NGO団体太平洋歴史公園が運営する戦争史博物館(T. Stell Newman Visitor Center)の日本人来館者への教育サービスの一環として、ワークシートの開発や1日プログラム開発の提案と、引率した学生を対象にプログラムのモデル検証を行った。グアムへの日本からの修学旅行数が増加する中で、教育の視点を生かしたプログラム開発が求められる中で、本モデル検証は効果や問題点を明確にすることができ、その後のNGOと旅行代理店や高校との協議に役立っている。
太平洋地域の理解を深める教材として「舞踊」に注目して本研究を進めているが、マリアナ諸島、特にグアムで展開している文化復興運動の一つ「チャモロダンス」の教材化である。チャモロダンスには、植民地支配以前に近い踊りとしての古典、コロニアルの象徴であるスパニッシュステップ、現代アートとして舞踊の三種類があり、この歴史を学ぶことそのものが教材としての価値をもつ。知識理解にとどまらず身体表現や集団での表現を通して、従来の国際理解や異文化理解の在り方とは異なる新しい学びのスタイルを構築することができる。実際に学生とチャモロダンスに取り組み表現活動を行うことで、知識や表現の共有を通して「理解」を広げ共有することができている。
また、本テーマに関する研究成果を含めた刊行物を2冊出版することができた。以上のことから、当初の計画以上に進展している、と判断する。

今後の研究の推進方策

平成25年度は最終年度となるため、継続して教材化や実践に加え、日本のポストコロニアル教育学への理論構築を試みること、成果をまとめ普及することを意識して研究活動を進める。研究中間報告を研究会や学会(日本国際理解教育学会など)の研究大会において発表をし、広く意見を求め、研究の妥当性を検討することとする。
日本の生徒・学生の太平洋理解の表象として、グアムをテーマにした「コラージュ作品」を制作している。これらの作品がグアムでの展示会に出展される企画が進行しており、太平洋地域理解の評価を地元の視点から得る機会を設ける予定である。
また太平洋地域を理解するための小冊子の作成を検討している。教材として使用する他、広く配布することで研究成果の普及に役立てたい。

次年度の研究費の使用計画

研究費の使用計画として以下を予定している。
1、引き続き太平洋地域においてポストコロニアルの視点からフィールドワークを行い、教材化に有効な資料や証言記録を蓄積する。2、学生が作成した作品の展示会出展のための旅費など。3、関連する文献の購入。4、報告書や小冊子の作成印刷。
特に4を念頭に置き研究費を使用していきたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 社会科における多文化教育の再構築―ポストコロニアルの視点から先住民学習を考える―2013

    • 著者名/発表者名
      中山京子
    • 雑誌名

      社会科教育研究

      巻: 116 ページ: 35-44

    • 査読あり
  • [雑誌論文] グローバル・ヒストリーにおける太平洋地域の意義と歴史教育―マリアナ諸島を中心にー2013

    • 著者名/発表者名
      中山京子
    • 雑誌名

      グローバル教育

      巻: 15 ページ: 76-88

    • 査読あり
  • [学会発表] トランスナショナルな歴史認識の形成とグローバル教育―パールハーバー教育ワークショップの実践から―

    • 著者名/発表者名
      中山京子
    • 学会等名
      日本グローバル教育学会
    • 発表場所
      同志社女子大学
  • [図書] 先住民学習とポストコロニアル人類学2012

    • 著者名/発表者名
      中山京子
    • 総ページ数
      343
    • 出版者
      御茶の水書房
  • [図書] グアム・サイパン・マリアナ諸島を知るための54章2012

    • 著者名/発表者名
      中山京子編
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] 「文化人類学と社会科」『新版社会科教育学事典』2012

    • 著者名/発表者名
      日本社会科教育学会編
    • 総ページ数
      435
    • 出版者
      ぎょうせい

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公開日: 2014-07-24  

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