本研究の目的は,優れた世界史教育を実践するための教育のモデル構築を行うことである。そのために米国のCollege Boardが運営するAdvance Placement(以下,APと略記)世界史コースを対象とした調査を行った。APコースは高校の教師が大学レベルの授業を行うところに特徴があり,その教育内容も米国の世界史教育研究者から優れたものと評価されている。本調査は,AP世界史コースの計画されたレベルから実際の教室現場までの一貫した調査を行い,その特質を明らかにすることを通して,我が国の世界史教育に寄与できる実践可能性を担保した世界史教育モデルを提示することを図るものである。 H25年度は実地調査および研究成果のまとめを行った。まずH24年度に実施できなかった,ジョージア州にある公立高校のDunwoody High SchoolでAP世界史を担当するMr.Vincentを訪問し調査を行った。彼はAP世界史のWebサイトで優れた教師として紹介されており,H24年度に調査を行った2人の教師と同様にAP世界史を担当しようとする教師に対するコース設計のガイドを作成している。調査内容は,担当する授業の参観およびそれについてのインタビュー,さらにAP世界史コースについての総合的なインタビューを行い,AP世界史の授業づくりや教育観んちういての聞き取り調査を行った。次に,観察した授業の特徴とAP世界史コースが設定するカリキュラムの分析・比較を通して,どのような論理で優れた世界史教育が実施されているかを考察しモデルの構築を図った。AP世界史コースは世界史の出来事を取捨選択する原理をカリキュラム自体が備えており同時に教師の自主性を保障する手立ても有していることから,教師の一方的な語りに終始しないインタラクティブな世界史教育を実現することができるようになっていることを明らかにした。
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