本研究では、文章がディスプレイ上に表示される際の弱視者の読書の特徴について調べ、電子教科書を弱視児が使うという観点から考察することを目的とした。顔を近づけてもディスプレイでは読む面が暗くならないことの影響について検討した。ディスプレイ上の文章を、自分が読みたいと思う文字サイズに調節する課題を実施した。文章は、コントラストが約95%、55%、30%、15%の4通りで提示された。晴眼者4名が、「通常条件」と白く混濁したゴーグルを装着して見る「混濁条件」で参加した。その結果、通常条件では、15%コントラストでは95%の2倍の文字サイズを、混濁条件では、15%コントラストで6倍の文字サイズを選んだ。また、弱視者2名では、両名とも55%もしくは30%コントラストまでしか文字を読むことができず、55%の時点で3倍程度の文字サイズを選択していた。これらのことから、弱視ではコントラスト低下の影響が大きいこと、つまり紙面が暗くなることで読み辛くなることが推察された。また、画面を白黒反転させた場合、反転を好む弱視者では反転させた方が、好まない弱視者では反転させない方が文字サイズが小さくなる傾向にあった。これらのことから、電子教科書のようにディスプレイ上に表示される場合、コントラスト低下が生じないこと、白黒反転が選択できることにより、より小さい文字サイズで1画面に多くの情報を提示できる利点があると考えられた。また、画面上の文章を読む動作を分析すると、晴眼者は視対象をあまり動かさず主に眼を動かして読書するのに対して、弱視者は眼と頭と視対象を総合的に動かして読書する様子が見られた。現在、拡大教科書が提供されているが、このような動作で読書を行う場合、版の大きさや重量が問題になることもある。電子教科書が現在のタブレット端末の大きさ、重さになるのであれば、そのような問題も改善されることが期待される。
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