研究課題/領域番号 |
23730860
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
笹原 未来 福井大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (90572173)
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キーワード | 重度・重複障害 / 医療的ケア / コミュニケーション / 教育的対応 / 実践研究 |
研究概要 |
研究対象となる医療的ケアを要する重度・重複障害者の自宅へ訪問し,行動観察及び教育的対応を継続して行なった。教育的対応によって得られた実践資料(ビデオ映像記録)に基づいて,医療的ケア場面並びに医療的ケア以外の場面におけるコミュニケーションの成立状況について詳細に分析し,実証的な知見について検討を重ねた。 研究対象者への働きかけにおいては、医療的ケア場面では,ケアの開始や終了を知らせる働きかけを家族やヘルパーらと協働して実施した。また,医療的ケア以外の場面においては,主として身体接触を介したやりとりを行なった。 収集した映像資料の分析においては,対象者のコミュニケーション行動の変化に着目しながら,対象者の行動,係わり手の働きかけとそれに対して発現した行動,実施されたケアとそれに対する対象児(者)の様子等を映像資料の中から抽出し,時系列に沿って相互に関連付けることで,コミュニケーションの成立状況について検討を行なっている.現在,平成24年度の経過を整理し,平成25年度に実施する教育実践の内容・方法を検討しているところである。また、筆者がこれまでに収集した映像資料の分析も,平成23年度から継続して取り組んでいるところである。加えて、平成24年度に実施した教育的対応場面についての映像資料を編集し、保護者や関係者に配布するための映像資料を作成中である。 現在,医療的ケア(吸引)場面において,吸引にかかわるイメージの共有が成立していることを示す場面が抽出されており,医療的ケア場面におけるコミュニケーションの変容,ならびにその他の教育的対応場面におけるコミュニケーションの成立状況との関連について,分析を進めているところである。また,フィールドの開拓に向けて,特別支援学校や施設への訪問を実施し,関係者とのラポールの形成を行なっているところであり,対象児を増やすことを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,対象者への教育的対応を継続的に実施している。対象者との日程調整がつかず,予定より実施回数は少ないが,概ね順調に教育的対応ならびに映像資料の収集を進めている。新たな研究対象児(者)の確保については,関係機関とのラポール形成を進めており,今後,研究協力の依頼を進める予定である。 教育的対応場面の映像資料の分析については,教育的対応終了後に実施している。対象者のコミュニケーション行動の変化に着目しながら,対象者の行動,係わり手の働きかけとそれに対して発現した行動,実施されたケアとそれに対する対象児(者)の様子等を映像資料の中から抽出し,時系列に沿って相互に関連付けることで,コミュニケーションの成立状況について検討を行なっている.また,筆者がこれまでに収集してきた映像資料(約150本)の分析も進めており,現在のところ約90本について分析を終えている。映像資料の分析によって得られた知見については,日本教育心理学会第54回総会の自主シンポジウムで報告を行い,重度・重複障害児(者)を対象とした教育実践に携わる関係者と意見交換を行なった。 現在,保護者や関係者に配布するための映像資料として,平成24年度の取り組みの経過についての映像資料の編集を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き,教育実践の対象者である重度・重複障害者1名への教育的対応を継続して実施するとともに,教育的対応によって得られた映像資料に基づいて,コミュニケーションの成立状況についての分析を進める。また,現在,フィールドの開拓に向けて,特別支援学校や施設への訪問を実施し,関係者とのラポールの形成を行なっているところであり,今後,関係者との調整がつき次第,研究協力の依頼をし,対象児(者)を増やして教育実践ならびに映像資料の分析を行なう予定である。 新たに収集した映像資料については,引き続き,対象者のコミュニケーション行動の変化に着目しながら,対象者の行動,係わり手の働きかけとそれに対して発現した行動,実施されたケアとそれに対する対象児(者)の様子等を映像資料の中から抽出し,時系列に沿って相互に関連付けることで,コミュニケーションの成立状況についての分析を行なう。さらに,医療的ケア場面におけるコミュニケーションの変容,ならびにその他の教育的対応場面におけるコミュニケーションの成立状況との関連についても分析を進め, これまでの教育実践の経過について整理を行なう。加えて,筆者がこれまでの教育実践において蓄積してきた映像資料約150本すべての分析を終了させる予定である。 平成24年度までに得られた知見については,研究会や学会等で報告を行い,重度・重複障害児(者)を対象とした教育実践研究に携わる関係者や,コミュニケーションに関する研究を行なっている研究者と意見交換を行う予定である。また,教育実践の方法論についての研究会等にも参加し,教育実践研究のまとめ方についても検討を行う予定である。保護者や関係者に対しては,前年度同様,編集した映像資料を配布することで,これまでの成果を還元する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主に国内旅費,消耗品費として使用する予定である。 国内旅費については,教育実践及び資料収集の主な場である宮城県仙台市への交通費(約10回程度),情報収集並びに研究成果発表の場である日本特殊教育学会ほか関連諸学会への参加旅費,コミュニケーションや重度・重複障害児(者)を対象とした教育実践に関する研究会への参加旅費として使用する予定である。 消耗品費としては,映像資料の記録用DVDを購入する予定である。また,対象児(者)の状態や教育的対応の進捗に合わせて,必要となる教材・教具を購入する予定である。
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