インクルーシブ教育の思想と実践が世界的な潮流となっている。とりわけ、国連「障害者の権利条約は、インクルーシブな教育制度の確保を原則的方向性として位置づけている。わが国においても、インクルーシブ教育の具現化に対する取り組みの進展が求められており、インクルーシブ教育の理念に即した特別支援教育を推進し、定着させるための教員養成カリキュラムの在り方が模索されつつある。そこで、インクルーシブ教育を先駆的に進めてきた米国の経験を土台に、新たな現代的ニーズに対応するための教員養成カリキュラムの動向を把握し、教員養成機関における特徴的なカリキュラムの分析を行った。 インクルーシブ教育の導入に応じた教員養成システムの構想には、各国の背景事情により模倣的な移入は困難と考えられる。ただし、効果的な教育実践を可能とする教員養成の力点と基盤的条件があると考えられる。そこで、インクルーシブ教育をめぐる国内の実践的課題とニーズについて日本及び米国において質問紙調査を実施し、実践的課題を明らかにした。とりわけ、わが国では、インクルーシブ教育に関する動向の理解、個のニーズに対応するためのアセスメントや指導計画といった新たな教育課題の把握や支援方法に関する準備が十分ではないと感じられていた。また、米国の通常教育教員養成カリキュラムにおける障害に関連する内容の位置づけと運用方法の動向を把握したうえで、実際的なカリキュラム(ハワイ大学マノア校における同時履修プログラム[Dual Preparation Program])をとりあげ、その構成と特徴について分析を行った。
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