研究課題/領域番号 |
23730866
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研究機関 | 東京成徳大学 |
研究代表者 |
那須野 三津子 東京成徳大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00383464)
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研究期間 (年度) |
2015-03-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本人学校 / 障害児教育 / 1990年代初頭 / 特別支援教育 / インクルーシブ教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1990年代初頭に、日本政府からの派遣教員を障害児教育担当に配置した日本人学校2校(ニューヨーク日本人学校とシンガポール日本人学校)に着目し比較することで、日本人学校における障害児教育の実施条件を明らかにすることである。 本年度は、両校の障害児教育に関する史資料の収集・分析をすすめつつ、各校の当時の在留邦人の就学要求等をよく知る関係者に、障害児教育担当教員(日本国内の特殊学級担任あるいは通級による指導の担当に相当する教員)配置の経緯等について尋ねた。
(1)ニューヨーク日本人学校については、当校に「特殊教育プログラム」を設置することを日本政府に請願書として提出したニューヨーク臨床教育父母の会の代表(当時)を招聘し、請願運動の経緯等についての公開講演会を開催した。同氏から寄贈を受けた史資料等を分析した結果、現地の教育制度にもとづき、日本語の教育環境が必要であると査定を受けた子どもも、日本政府が日本人学校を通して保障する「教育を受ける権利」を享受できることが目指されていた事実を明らかにした。さらに、必要に応じて取り出し指導を受けるためのリソースルーム(当時の日本で制度化されていなかった通級による指導に相当)と、その指導のできる派遣教員の配置を、障害のある子どもの保護者が、日本人学校関係者に要望していたこと等を明らかにした。
(2)シンガポール日本人学校については、1987年7月に、現地採用教員を障害児教育担当に配置した当校が、その後、どのような教員配置を行ったのかについて明らかにした。さらに、日本政府から派遣された教員を、1992年度に学級担任を兼務しない障害児教育担当として配置した経緯について、当時の関係者に質問紙調査を行い、特殊学級の設置が検討されていたこと等の新たな事実を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニューヨーク日本人学校とシンガポール日本人学校について、当時の在留邦人の就学要求等をよく知る関係者から、障害児教育担当教員配置の経緯等に関する調査への協力が得られたおかげで、研究をより進捗させることができた。他方で、受入国の社会的背景(教育制度等)が在留邦人の就学要求に及ぼす影響についての比較分析は、部分的な段階に留まった。
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今後の研究の推進方策 |
両校の障害児教育(教育制度等含む)に関する史資料の収集を継続し、その分類整理・分析作業に重点を置く。あわせて、研究対象校地域の在留邦人の就学要求等をよく知る関係者を対象とした調査をさらに行う。その上で、両校における在留邦人の就学要求等を比較し、受入国の社会的背景(教育制度等)の影響について検討を行い、両校で障害児教育の実施を可能とさせた諸条件を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、本年度に使用する予定であった外国調査を実施しなかったためである。本年度、外国調査を実施しなかった代わりに、研究対象校地域の社会的背景(教育制度等)や在留邦人の就学要求に詳しい専門家を外国から招聘し、公開講演会を行い、その講演録を作成した。この講演者から、史資料を寄贈する旨の申し出があった。これらの史資料は、本研究の発展に大きく寄与するものであるため申し出を受け、本年度の外国調査の実施を取りやめ、当該資料の整理・分析作業にも着手した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費については、史資料収集のための旅費、研究指導・助言に関する費用、研究成果の公開費用を中心に、使用を計画している。本年度の残額については、譲り受けた史資料等に関する研究指導・助言に関する費用や、研究対象校地域の在留邦人の就学要求等をよく知る関係者への聞き取り調査に関する費用等に追加して充てる計画である。
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