最終年度にあたる平成28年度は、前年度までの成果を踏まえた上で、主に下記3つの課題を実施した。 第一の課題として、研究対象校(ニューヨーク日本人学校とシンガポール日本人学校)の障害児教育に関する史資料の収集を継続し、その分類整理・分析作業を行った。特に、ニューヨーク日本人学校とシンガポール日本人学校を比較するにあたって史資料が不足している場合は、聞き取り調査や質問紙調査などで補えるかどうかを検討した。 第二の課題として、ニューヨーク日本人学校とシンガポール日本人学校を比較する際に史資料が不足している場合、研究対象校地域の在留邦人の就学要求等をよく知る関係者を対象とした調査をさらに行った。具体的には、日本政府に対しニューヨーク日本人学校における「特殊教育プログラム」設置の請願運動を行った自助組織の代表者に加え、本年度は、シンガポール日本人学校において障害児教育担当となった初の日本政府派遣教員や障害のある子が在籍していた学級の担任などに聞き取り調査や質問紙調査を行った。あわせて、シンガポール日本人学校が当時認めていたボランティア団体のメンバーにも聞き取り調査を行った。 第三の課題として、ニューヨーク日本人学校とシンガポール日本人学校のある地域における在留邦人の就学要求等を比較し、受入国の社会的背景(教育制度等)の影響について検討を行い、両校で障害児教育の実施を可能とさせた諸条件を分析し、その成果の一部を公表した。
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