研究課題/領域番号 |
23730868
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
大橋 さつき 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (60313392)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 発達障害児 / 親支援 / 遊び / 幸福感 / ムーブメント教育・療法 |
研究概要 |
障害児の発達支援のためには、親の子育て充足感や幸福感、家族全体のQOLを高める活動が必須である。遊びを原点とする「ムーブメント教育・療法」では、従来から子どもの発達支援においては家族参加型の活動を基本とし、最近では、楽しく受容的な遊びの場の体験を通して親自身の意識にポジティブな変容が生まれ主体的な関わりが増すという事例が報告されている。本研究の目的は、ムーブメント法を活かした遊びのプログラムの実践において、親が肯定的な感情を抱いたときには、どのような事象が起きていたのか、どのような場面が親の幸福感と深く関係しているのか明らかにし、ムーブメント活動を通して親が持つ幸福感にはどのような特色があるのか考察することである。さらには、その結果をもとに、発達障害児をもつ親の幸福感を支えるための遊びのプログラムのあり方を具体的に提示し、療育実践に効果的なツールとしてプログラムの評価・実施・立案に役立つアセスメントを作成することである。 初年度である平成23年度は、以下の研究に取り組んだ。 【研究1】ムーブメント法による遊びの実践において、親自身が「楽しかった」「嬉しかった」「やる気がでた」など、充実した前向きな気持ちを抱くときにはどのような事象が起きていたのか、また、親の幸福感はどのような活動と関係があったのか、さらに、活動を通して親が抱く幸福感にはどのような特色があるのか、これまでの活動で蓄積されている「コミュニケーション・シート(自由記述式の質問紙)」に残された親自身による記述を対象に、事例を抽出し分類して考察した。 【研究2】継続的にムーブメント活動を行っている地域団体の活動において、参加家族を対象に、親の「育児幸福感」と「主観的幸福感」についてインタビューと質問紙調査を行い、ムーブメント活動体験の内容と幸福感の関係性を考察するための予備調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究1】においては、ほぼ計画通りに進めることができた。 【研究2】においては、先行研究や【研究1】の結果をもとに尺度項目を整理し本調査まで行う予定であったが、予備調査の段階に留まっている。これは、予備調査としての聞き取り、アンケート調査の結果から、長年継続的に活動を続けている家族やその支援者(保育士・教師・施設スタッフ)が高い幸福感を抱いていることが解り、取り組みの特性や活動団体としての発展の経緯などを詳しく調べる必要を感じたためである。特に、活動後の「ふりかえり」が親同士のピアカウンセリングの要素を含んでいる点や支援者の資質向上のために定期的な研修を取り入れている点などについて、これまでの活動記録の収集や質的調査を継続して行っており、本研究の成果に直結すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目となる平成24年度においては、中間報告としの発表を行いながら、当初の計画であった具体的なプログラムの試作と実践研究を計画通り行うが、初年度に実施できなかった質問紙による本調査についても同時に展開できるよう、研究協力先と詳細を調整し実行する。 まず、初年度の基礎研究の成果から、親の幸福感と関連性の高い活動要素をまとめ、それらをもとに実践プログラムの試案を作成し、発達障害児をもつ親の幸福感を支えるための遊びのプログラムとして実施する。アセスメントツールとしては、ムーブメント教育・療法において活用されている既存のアセスメント「MEPA」を土台とし、親の幸福感を支える活動の深まりを確認できる項目を中心に設定して試案を作成し使用する。加えて、活動開始時と終了時において、幸福感に関する質問紙調査を行い、参加した親の幸福感の高まりを検討する。実践を繰り返す中で、プログラムの構成要素およびアセスメントの項目の妥当性を検討し修正を加えながら、段階的にプログラム構成の基本要素とアセスメントの項目の雛形を作成する。さらに、発達障害児の支援活動を継続して展開している各地の現場に出向いて実践内容を調査し、考案したプログラムとアセスメントツールの現場での活用性や普及拡大の可能性について検討する。特に、プログラム実施のリーダーやスタッフ等となる支援者を対象にプログラムと評価尺度の試案等支援ツール活用に関する聞き取り調査を実施する。 完成年度となる3年目には、「発達障害児をもつ親の幸福感を支える遊びのプログラム」について、実証的な考察を添えてモデルプログラムとアセスメントを提示し、活用の効果に関する考察を研究成果としてまとめ、発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
プログラムの実践の補助者、映像記録、聞き取り調査等によるデータの整理、分析作業の補助者を援用しアルバイト代を使用する。各地の実践現場に出向くため、旅費を計上する。さらに、インタビューやプログラム実践に参加する家族や団体の協力が不可欠であるため、謝金、会合費、通信費を使用する。プログラム実践における用具及び用具開発のための消耗品等の購入も計画されている。その他、必要に応じて、検査用紙、文献資料、文具等の消耗品も購入する。
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