研究課題/領域番号 |
23730868
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
大橋 さつき 和光大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60313392)
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キーワード | 発達障害児 / 親支援 / 遊び / 幸福感 / ムーブメント教育・療法 |
研究概要 |
本研究の目的は、ムーブメント法を活かした親子遊びのプログラムの実践をもとに、発達障害児をもつ親の幸福感を支えるための遊びのプログラムのあり方を具体的に提示し実践に役立つツールを提示することである。初年度である平成23年度には、【研究1】として、ムーブメント法による遊びの実践において、親の幸福感はどのような活動と関係があったのか、さらに、活動を通して親が抱く幸福感にはどのような特色があるのか、明らかにした。また、【研究2】として、継続的にムーブメント活動を行っている地域団体の活動において、親の幸福感について、インタビューと質問紙調査を行い、ムーブメント活動体験の内容と幸福感の関係性を考察するための予備調査を行った。 2年目の平成24年度においては、【研究3】として、1年目の基礎研究をもとに、親の幸福感と関連性の高い活動要素をまとめ、それらをもとに実践プログラムの試案を作成し、親の幸福感を支えるためのムーブメントプログラムを複数の地域で実施した。また、アセスメント開発として親の幸福感を確認できる項目の抽出にむけて、【研究2】で使用した質問紙をさらに検討し調査を実施した。加えて、ムーブメント活動への継続度と幸福感の関係を調査した。 さらに、調査の過程において、ムーブメント活動に参加する以前に関する親の語りや発達障害特有の課題に関する考察から新たな問いが生まれた。それは、これまで、親子ムーブメント教室の参加者のみを対象に研究調査を進めてきたが、実際には、それ以前の段階にある「障害児を対象とした発達支援の活動に参加していない(できない)親」の苦悩も視野に入れる必要性があるのではないかという疑問である。これらを受け、新たに追加研究として、神奈川県内のムーブメント活動に参加したことがない親を対象により聞き取り調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の【研究3】では、尺度開発の土台となる幸福度に関する質問紙調査の実施数が計画の3分の2となってしまったが、1年目の積み残しから2年目まで含め、ほぼ計画通りに実施することができた。現在、発達障害児の親の幸福感を支える遊びのプログラムの構成要素と評価尺度の雛型を構成することができた。 ただし、追加研究の実施によって、新たな課題を見いだし、研究成果の中間報告を十分に行うことができなかった。追加研究で得た知見は、療育機関や自治体が運営する支援事業等障害児を対象とすることが明言された活動に参加することが、我が子の障害を受容し始めた頃の親にとっては大きな心理的負担になる場合が多く、実際に支援の必要性を感じながらも支援を受けることに抵抗を感じている親や継続して参加することができない親に対する支援が必要であるという点である。最終年度においては、このような親の苦悩も視野に入れて、既に構築されたモデルプログラムや評価尺度を再検討する必要性が生じてきたが、発達障害児の親の幸福感を支える遊び活動のあり方を考えるにあたって重要な気づきを得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
完成年度となる3年目の平成25年度においては、【研究4】として、これまでの調査、実践をもとに、「発達障害児をもつ親の幸福感を支える遊びのプログラム」について、実証的な考察を添えてモデルプログラムと評価尺度を提示することを目指す。ただし、その分析対象となる実践活動においては、変更を加えたい。その理由は、2年目の文献調査や現場調査、聞き取り調査において、ムーブメント教室の参加者を対象とした調査では、継続的な参加によって幸福感が高まる傾向を示されたものの、何らかかの経緯でムーブメント教室に辿り着き自ら参加することができている親の幸福感は、その時点でおおむね高く、実際に支援を必要としている親は障害受容の段階での苦痛や社会的な孤立の中で、参加のきっかけや継続的参加が実現できずにいる親であろうという見解を得たことにある。発達障害児の早期支援においては、診断の有無に関わらず、気になる段階から利用できる開かれた活動で、かつ、親にとって身近で敷居が低く参加しやすい支援の場が必要である。本研究の成果であるプログラムと評価尺度も、そのような活動において実行されることを目指して開発する必要性があると考えた。よって、計画時においては、大学にて定期的な親子ムーブメント教室を開催しその活動に発達障害児の親子に参加してもらい、プログラムや評価尺度の効果を検証するという実験的な計画であったが、これを、①地域の行政や保育所が主催する子育て支援事業としての親子教室、②NPO団体による地域密着型の活動や出張型の取り組みを対象にした実践研究に変更する。 また、研究成果については、学会報告、論文投稿などを積極的に行っていく所存である。さらに、関係者および保護者を対象とした研究会を開催し、学会誌等で発表したポイントを解りやすくまとめて報告しながら、臨床現場での活用に向けて意見交換を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
プログラムの実践の補助者、映像記録、聞き取り調査等によるデータの整理、分析作業の補助者を援用しアルバイト代を使用する。さらに、インタビューやプログラム実践に参加する家族や団体の協力が不可欠であるため、謝金、会合費、通信費を使用する。プログラム実践における用具及び用具開発のための消耗品等の購入も計画されている。その他、必要に応じて、検査用紙、文献資料、文具等の消耗品も購入する。
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