本研究の目的は、ムーブメント法を活かした親子遊びの実践をもとに、発達障害児をもつ親の幸福感を支えるための遊びのプログラムのあり方を提示することである。初年度には、ムーブメント活動の記録やインタビュー調査をもとに、活動を通して親が抱く幸福感の特色について探った。2年目は、親の幸福感と関連性の高い活動要素をまとめ、それらをもとに実践プログラムの試案を作成し、親の幸福感を支えるためのプログラムを複数の地域で実施した。 完成年度(3年目)となる平成25年度においては、成果発表を行った。 まず、発達障害児をもつ母親の幸福感を支える遊び活動の特徴を6つのカテゴリーに分析し考察した。また、特に自閉症スペクトラム児を対象とした母子間のやりとり場面を分析した。これらから、発達障がい児の母親がムーブメント活動に参加する子どもの姿から子どもの特徴や発達について肯定的な承認や気づきを得る、他者と子どもの関係から自身が子にかかわるための手がかりを自然に身につける、「子どもを肯定的に受け止め、共に楽しい体験を共有することができた」という実感から子どもへ愛情を深め自信を回復するきっかけを得ていることが明らかになった。さらに、母親自身がより主体的に遊びに参加することで自身の気持ちが子どもと重なり子どもの気持ちや表現の理解が深まり、場づくりを担う一員としての積極的な姿勢にもつながり好循環が生じていることが推察された。 また、本研究では、親の幸福感を確認できるアセスメント項目の抽出を目指したが、具体的な評価尺度の完成には至らなかった。しかし、これらの研究で得た知見をあらためて発達障害児支援の今日的課題と照らし合わせることで、発達障害児支援におけるムーブメント教育の有効性について、「身体性」、「発達性」、「環境性」、「関係性」、「遊び性」の5つの視点から論じ、具体的なプログラムを提示した。
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