研究課題/領域番号 |
23730870
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
片桐 正敏 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 特命助教 (00549503)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 注意の切り替え / 局所処理 / 広域処理 / 認知的柔軟性 |
研究概要 |
・研究の目的 自閉症スペクトラム障害のある人は,注意の解放の問題があることが指摘されており,局所から広域への注意の切り替えの弱さが関与していると考えられている。こうした認知処理は,認知的柔軟性と密接に関係している。本研究では,自閉症スペクトラム障害のある人の注意の切り替えの問題,及び注意の解放の問題についてswitching パラダイムおよびgap-overlap課題を用いて検討する。・研究実施計画 平成23年度では,自閉症スペクトラム障害のある子どもを対象にgap-overlap課題を用いて視覚と聴覚の同時呈示事態における注意処理を検討した。この研究は,ASDの注意機能について注意と視覚-聴覚処理との関係性に対して,どのレベルで困難が見られるかをPCモニターに視覚と聴覚の刺激を呈示し,被験者の反応時間を検討した。現在13名の協力が得られ,実験が実施された。 さらに自閉症スペクトラム障害のある人の局所から広域への注意の切り替えの問題を検討するために,Navonの階層文字課題を用いたswitching課題で検討を行った。実験では,ボタン押しを求める認知実験を自閉症スペクトラム障害(11名)と定型発達者(11名)で実施した。その結果,自閉症スペクトラム障害のある人に存在する局所から全体への注意の困難さが認められた一方で,全体から部分への注意処理はintactかむしろ優れていた。これらの研究を通して,認知能力の統合的な側面をより検討することによって,自閉症の認知能力の理解に寄与し,発達支援などに生かす基礎的な知見を提供することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉症スペクトラム障害のある人を対象としたswitching課題の実験は終了し,第16回日本認知神経科学会にて発表を行った。さらに論文として現在国際誌への投稿を行い,審査中である。gap-overlap課題を用いた視覚と聴覚の同時呈示事態における注意処理を検討した研究は現在進行中であるが,実験は6月末までに終える予定である。この成果は,パリで行われる国際児童青年精神医学会にて発表する予定である。注意の切り替えは,実行機能と密接に関係しているが,こうした認知能力は,社会生活で必要とされる推論機能と関係があることが示唆されている。これらの関係を検討した研究を実施し,日本発達心理学会第23回大会にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後,被験者を募集し現在進行中の実験を6月末までに終える予定である。この成果は国際学会および国内学会にて発表する予定である。さらにデータの解析と論文執筆を平成24年度内で終了させ,国際誌に投稿する予定である。被験者の協力が得られれば,NIRSを用いて脳機能の変化についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
7月に行われる国際児童青年精神医学会にて発表を行う。さらに,国内学会にて複数回発表を行う要諦であるため,交付された研究費の3分の2強は旅費に充てる予定である。その他は,研究遂行に必要な物品,被験者の謝礼と英文校正費に充当される。
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