研究課題/領域番号 |
23730870
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
片桐 正敏 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 特命助教 (00549503)
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 注意の切り替え / 注意処理 / 発達支援 |
研究概要 |
【研究の目的】 自閉症スペクトラム障害のある人は,注意の解放の問題があることが指摘されており,局所から広域への注意の切り替えの弱さが関与していると考えられている。こうした認知処理は,認知的柔軟性と密接に関係している。本研究では,自閉症スペクトラム障害のある人の注意の切り替えの問題,及び注意の解放の問題についてswitching パラダイムおよびgap-overlap課題を用いて検討する。 【研究成果】 今年度は,自閉症スペクトラム障害のある人の局所から広域への注意の切り替えの問題を検討するために,階層文字課題を用いたswitching課題で検討を行い,その研究成果報告を行った。これまで自閉症スペクトラム障害のある人は,局所処理が優位であるとされてきたが,実験的な検討では一致した知見は必ずしも得られていなかった。本研究によって,自閉症スペクトラム障害のある人は,特に局所から広域への注意の切り替えに困難があることが示唆された。一方で,広域から局所への切り替えには問題が認められなかった。よって,自閉症スペクトラム障害のある人は,局所刺激の抑制に困難がある可能性が示唆された。本研究は,2013年2月Journal of Autism and Developmental Disorders誌に公表された。 さらに,自閉症スペクトラム障害のある子どもを対象にgap-overlap課題を用いて視覚と聴覚の同時呈示事態における注意処理を検討した。本研究は,自閉症スペクトラム障害の注意機能について注意と視覚-聴覚処理との関係性を明らかにする目的で実施した。その結果視覚-聴覚呈示条件では,自閉症スペクトラム障害のある子どもで反応の遅延が認められた。 両研究を通して,認知能力の統合的な側面をより検討することで,自閉症の認知能力の理解に寄与し,発達支援などに生かす基礎的な知見を提供することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉症スペクトラム障害のある人での階層文字課題を用いたswitchingの研究は,学会発表および国際誌に公表した。 同じく自閉症スペクトラム障害のある子どもを対象とした,gap-overlap課題を用いた視覚と聴覚の同時呈示事態における注意処理の研究は,若干の実験を残してほぼ実験が終了した。一部国内外の学会にて研究成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
実験はほぼ終了し,データ解析及び論文執筆を平成25年度の夏前までに終了し,国際誌に論文を投稿する。 これと平行して,本年度は近赤外線分光法を用いた脳機能計測を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度,初年度の繰り越しが少しあったため,本来の計画通りの支出を行った際,若干予算が余ってしまった。 次年度は,9月に行われる欧州自閉症学会にて研究発表を行う予定である(現在演題の審査中)。さらに国内学会にて複数の発表を行う予定であるため,繰越額も含めて交付された研究費の3分の2は旅費に充てる予定である。その他は,研究遂行に必要な備品,および被験者の謝礼と英文校正費に充当される。
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