研究課題/領域番号 |
23740002
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 太初 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (50466546)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | アソシエーションスキーム / 距離正則グラフ / Terwilliger代数 / 直交多項式 |
研究概要 |
ランク1コンパクト対称空間の組合せ的類似であるQ-多項式距離正則グラフ上のErdos-Ko-Rado型定理は、Delsarteによる線型計画の手法の重要な応用例であるが、証明の核心的な部分をより抽象的な枠組みであるLeonard対のレベルに拡張し、統一的な議論を行った。この結果は、1変数q-Racah直交多項式を取り扱うLeonard対の理論上も興味深いのみならず、より広範なアソシエーションスキーム上のErdos-Ko-Rado型定理を考察する上でも基礎となるものである。これらの成果については2012年1月及び3月に口頭発表を行い、現在論文を執筆中である。 2011年7月には米国Wisconsin大学のPaul Terwilliger氏のもとに滞在し、Leonard対の一般化である3重対角対に関して多くの議論・情報交換を行った。また、代数的組合せ論に於ける半正定値計画の現在までの応用の整理に取り組み、2011年10月に講演を行った。これらはいずれもアソシエーションスキームに付随する非可換代数であるTerwilliger代数に直接関係するものであり、本研究計画に関する豊富な知見の蓄積を行うことができたことは重要である。なお、距離正則グラフに関する解説論文の執筆をEdwin van Dam氏及びJack Koolen氏と継続して進めており、現時点では草稿をウェブサイトで公開している。 最後に、少々派生的な内容であるが、2012年3月に木村元氏及び田村宏樹氏と量子情報理論に関連した集中的な共同研究を行った。ここで得られた成果についても論文を準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響は大変大きかったが、研究時間は概ね確保できたと言える。現在継続して執筆中の距離正則グラフに関する解説論文には、2011年度はかなりの時間を割いた。これは本研究計画の提出後に依頼されたプロジェクトであるが、計画の内容に沿ったものである。以前からの懸案事項であった上述のErdos-Ko-Rado型定理の拡張の研究の完成は、研究計画に於いて重要な成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
上述のErdos-Ko-Rado型定理の拡張に基づき、種々のアソシエーションスキーム上のErdos-Ko-Rado型定理の研究にまず取り組むことが自然である。既に坂内英一氏や須田庄氏と関連した研究に部分的に取り組んでいる。距離正則グラフの解説論文の執筆は2012年度も継続するが、研究計画で述べた量子確率論の研究とある程度並行して行うことが可能であると考える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は現時点で少なくとも2つの国際会議への参加を予定している。研究計画ではTerwilliger氏との研究打合せのために米国Wisconsin大学に短期滞在することにしていたが、本年8月に上海で開催される国際会議にTerwilliger氏が招待されており、上海での研究打合せに切り替えることも検討している。上海交通大学の坂内英一氏とも現在研究交流を進めており、予算上のみならず、研究遂行上も大変効率的であると思われる。
|