研究課題/領域番号 |
23740003
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐垣 大輔 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40344866)
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キーワード | アフィン・リー代数 / 量子アフィン代数 / パス模型 / Lakshmibai-Seshadri パス / 量子 Bruhat グラフ |
研究概要 |
g をアフィン・リー代数とする. 当研究の目標は, 臨界レベルのウェイトを最高ウェイトとする g の既約最高ウェイト表現のパス模型を構成することであるが, この (予想される) パス模型と, レベル・ゼロの優整ウェイトを型とするパス模型との間には, 類似点があると予想される. 平成23年度は, g が捩れのないアフィン・リー代数の場合に, レベル・ゼロの優整ウェイトを型とする Lakshimibai-Seshadri パス (LS パス) についての研究を行い, それらを有限 Weyl 群上の (放物型) 量子 Bruhat グラフを用いて記述することに成功した. そして, その応用として, レベル・ゼロの LS パス全体のなすクリスタル上の次数関数 (=エネルギー関数) を, 量子 Bruhat グラフの最短有向パスのウェイトを用いて記述した. 平成24年度は, 引き続き, レベル・ゼロの LS パスと量子 Bruhat グラフの関係について研究を行った. 得られた結果は以下の通りである. (1) 平成23年度に記述した次数関数 (=エネルギー関数)の「双対」にあたる, 左次数関数 (=左エネルギー関数)を量子 Bruhat グラフを用いて記述した. (2) Postnikov による量子 Bruhat グラフの最短有向パスのウェイトに関する基本定理を, 放物型量子 Bruhat グラフの場合に一般化し, 組み合わせ論的な別証明を与えた. この結果と (1) の結果を合わせることで, 部屋パス模型とレベル・ゼロの LS パスとの間の対応や, Macdonald 多項式の量子 Bruhat グラフを用いた記述を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したとおり, 当研究の目標である臨界レベルのパス模型とレベル・ゼロの LS パスの間には類似点があると予想される. 過去2年度の研究により, レベル・ゼロの LS パスと量子 Bruhat グラフとの間の関係が概ねはっきりした. これは, 当初の研究計画にはなかったものではあるが, 当初の研究計画に比べてより効率的であり, かつ, 幅広い応用 (例えば量子コホモロジーといった幾何など) が期待できるものである. そこで, 達成度を「おおむね順調に進展している。」とする.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は, 次のような研究を行いたい. (1) 量子 Bruhat グラフは, アフィン・ワイル群上の「一般的な (generic) Bruhat 順序」と密接な関係がある. そして, 一般的な Bruhat 順序は, 当研究の研究対象である臨界レベルのウェイトを最高ウェイトとする既約最高ウェイト表現と関係している. そこで, 今後は, 一般的な Bruhat 順序を用いた LS パスを新たに考え, それがクリスタルになるかどうかを検証する. そして, クリスタルになることが分かった場合は, 対応する量子アフィン代数の表現を探す. (2) (1) の結果を参考にして, g がランク 1 または 2 の捩れのない A 型アフィン・リー代数の場合に, 臨界レベルの最高ウェイトをもつ既約最高ウェイト表現のパス模型の構成を目指す. 可能であれば, ランクが一般の捩れのない A 型の場合に, 同様のパス模型の構成まで行いたい. (3) 平成23年度に着手した「レベル・ゼロの Mirkovic-Vilonen 多面体」の理論の完成を目指す. これは平成24年度に行う予定であったが, 量子 Bruhat グラフに関する研究を行っていたため, あまり進んでいない. これが完成すれば, レベル・ゼロのパス模型や量子アフィン代数の有限次元表現の結晶基底を幾何的に調べることができるようになり, このアプローチから当研究の目標を達成することも期待できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
3月に出張した分の旅費が4月に支払われるため, 次年度使用額に含まれている. これ以外の平成25年度の研究費の使用計画は以下の通りである. (1) 4月中旬から7月中旬までドイツ・ケルン大学に滞在し, Peter Littelmann 氏やGhislain Fourier 氏,Deniz Kus 氏らと当研究に関する情報交換等を行う. (2) 6月下旬にフランス・パリで行われる研究集会「The 25th International Conference on Formal Power Series and Algebraic Combinatorics」に参加する. (この国際研究集会で, 昨年度までに得られたレベル・ゼロの LS パスと量子 Bruhat グラフの関係に関する研究成果が発表される予定である.) (3) 必要に応じて, 研究図書 (表現論, 数理物理等) やコンピュータを購入する.
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