g をアフィン・リー代数とする. 当研究の研究対象である臨界レベルの既約最高ウェイト表現は,半無限 Bruhat 順序と密接な関係がある.平成25年度には,g がねじれのない (untwisted) アフィン・リー代数の場合に,半無限 Bruhat 順序を用いて「半無限 Lakshmibai-Seshadri (LS) パス」を構成し,それらがなすクリスタルが,g に付随した量子アフィン代数上のエクストリーマル・ウェイト加群の結晶基底と同型であることを証明した. ところで,半無限 LS パスを null root を法として考えると,(平成23年度~平成24年度に,当研究において導入した)量子 LS パスが得られる.量子 LS パス全体の集合も,(次数作用素なしの)量子アフィン代数に関するクリスタルになる;このクリスタルは,いくつかの Kirillov-Reshetikhin 加群のテンソル積の結晶基底と同型であるため,非常に重要な研究対象である. 平成26年度は,量子 LS パスのなすクリスタルの部分集合で,その次数付きの指標が 非対称 Macdonald 多項式の t=0 および t=∞ における特殊化になるようのものを明示的に与えることに成功した.さらに,エクストリーマル・ウェイト加群における Demazure 加群の商加群として,その次数付き加群が非対称 Macdonald 多項式の t=0 における特殊化になるようなものを与えた.これらの結果により,臨界レベルの既約最高ウェイト表現と非対称 Macdonald 多項式の間に(半無限 Bruhat 順序を介して)何らかの良い関係があるのではないかと期待される.
|