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2012 年度 実施状況報告書

代数曲面の自己同型とその広がり

研究課題

研究課題/領域番号 23740010
研究機関東京理科大学

研究代表者

大橋 久範  東京理科大学, 理工学部, 助教 (40547006)

キーワードK3曲面 / 自己同型 / エンリケス曲面 / マシュー群 / 正則シンプレクティック多様体 / 国際情報交換(ハノーバー大学)
研究概要

前年度に執筆した瀧真語(東京電機大学)との共著論文"K3 surfaces and log del Pezzo surfaces of index three"がManuscripta Math.に掲載された。
エンリケス曲面の自己同型について、向井茂(京都大学)との共著論文"Enriques surfaces of Hutchinson-Goepel type and Mathieu automorphisms"を執筆・投稿し、Fields institute Communicationsに掲載されることが決定した。ここでは、以前にヤコビアンクンマー曲面を被覆に持つ3種類のエンリケス曲面の一つとして特徴付けたハッチンソン・ゲッペル型のエンリケス曲面の射影幾何と6次曲面表示について調べ、そこに自然に現れる位数8の初等可換群作用がまた同じエンリケス曲面を特徴付けることを示した。
同じくエンリケス曲面に関して、金銅による七種の分類のうちVII型のエンリケス曲面(ファノ型)について、全く新しい射影実現を発見した。自己同型の作用、存在まで込めて非常に明瞭になった利点とともに、巡回群作用を持つエンリケス曲面の全く新しい一次元族を構成できた。これらは、向井との共同研究においても重要な位置づけを持つ。
ハノーバー大学のMalte Wandelと共同で、高次元の既約正則シンプレクティック多様体の自己同型に関する研究を始めた。これはK3曲面上の層のモジュライ空間に自然に誘導される自己同型の一般化で、代数曲面と密接に関係する。私は非シンプレクティック自己同型の変形族のなかで二番目に大きい次元19を持つ族を分類し、関連した自己同型の変形に関する話題について調べている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

エンリケス曲面の例を数多く計算してきた結果、いろいろな局面において必要となる例・反例のリストがだいぶ集まってきたように思う。言い換えると、エンリケス曲面の自己同型の分類や関連した現象について議論をする際に土台にできる例がたくさん集まったように感じる。これは特に、5次対称群が作用する射影空間とエンリケス曲面を考えていて偶然現れたものがVII型(ファノ型)のエンリケス曲面だったときに感じたものである。K3曲面の場合には次数を上げていけば少なくとも理論的には無数に高い対称性を持った射影モデルが構成できるはずであるが、エンリケス曲面の場合には理論的にもそうではなく、実際にファノ型の場合のように、例を調べていった結果また既知のものに戻るということがある。これは、エンリケス曲面の自己同型についてある程度閉じた議論の輪を作ることができた証なのではないかと思っている。
また、正則シンプレクティック多様体の自己同型を調べることを通じて、K3曲面上の層のモジュライという豊かな分野ともつながりを持つことができた点は、はじめに期待していた以上の成果と言える。

今後の研究の推進方策

エンリケス曲面の持つ重要な不変量に、ルート不変量というものがある。これは大雑把には曲面上に存在する非特異有理曲線が生成するピカール格子の中の部分格子であり、もともとの定義はNikulinによるが、最近より精密なものが向井により考えられている。マシュー型の自己同型の格子論的構成や、それ以外の族を実現するエンリケス曲面の構成の際にも、ルート不変量に近い概念や性質が重要なファクターとして現れる。従って、この観点から、すでに得られたエンリケス曲面の例を分類し直しておくことは、今までに得られた結果をまとめる際に大切かもしれない。
エンリケス曲面の自己同型を取り扱う場合の基本的な手法はおおよそ実際にやってみて、その限界も示唆されたように思う。一般の有限半シンプレクティック自己同型群の分類はまだ途中であるが、この問題について今までの手法から得られる事柄をできるだけきちんと整理し、できれば発表したいと思う。
正則シンプレクティック多様体の場合には、変形理論が研究の基本的な道具となる。エンリケス曲面についても、似たことができないだろうか。

次年度の研究費の使用計画

正則シンプレクティック多様体に対しても、エンリケス曲面の類似となりうるような、エンリケス多様体の概念が定義されていて、それらについての研究も始まったばかりである。この辺りの進展を見守っている研究者も多いと思われる。これらは基本的なところでは全てK3曲面の自己同型と結びついているため、今後の本研究においても関連を求めたいと考えていて、そのための研究打ち合わせ(専門知識の提供依頼)・コンピュータ環境の整備等への研究費の使用を見込んでいる。
今年度始まった、ハノーバー大学のM. Wandelとの正則シンプレクティック多様体の自己同型の共同研究、さらに可能ならより数論的な別の観点からのK3曲面やエンリケス曲面の自己同型の研究をするために、大学の学期間の休みを利用してハノーバー大学に滞在したいと考えている。
また、今年度ノートパソコンを買い替えたものの、データの移行と新しい計算環境・論文作成環境の構築が一部まだ完全ではない。特に、書類作成やプレゼンテーションに使う諸々のソフトウェアが足りていないため、こちらの充実のためにも研究費を使いたいと思う。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] K3 surfaces and log del Pezzo surfaces of index three2012

    • 著者名/発表者名
      H. Ohashi and S. Taki
    • 雑誌名

      manuscripta math.

      巻: 139 ページ: 443--471

    • DOI

      10.1007/s00229-011-0524-z

    • 査読あり
  • [学会発表] The rationality of moduli spaces of Eisenstein K3 surfaces2013

    • 著者名/発表者名
      H. Ohashi
    • 学会等名
      New trends s in Arithmetic and Geometry of Algebraic Surfaces
    • 発表場所
      CIRM(フランス)
    • 年月日
      20130313-20130313
    • 招待講演
  • [学会発表] On automorphisms of Enriques surfaces2013

    • 著者名/発表者名
      H. Ohashi
    • 学会等名
      Arithmetic and Algebraic Geometry 2013
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      20130129-20130129
    • 招待講演
  • [学会発表] K3 曲面やエンリケス曲面の有限対称性の分類2012

    • 著者名/発表者名
      大橋久範
    • 学会等名
      代数幾何講演会
    • 発表場所
      埼玉大学
    • 年月日
      20120703-20120703
    • 招待講演
  • [学会発表] Automorphisms of the octahedral Enriques surface2012

    • 著者名/発表者名
      大橋久範
    • 学会等名
      高次元代数幾何の周辺
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120612-20120612
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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