平成26年度の成果:複素数体上のエンリケス曲面に対して、有限位数の非半シンプレクティック自己同型の分類をした。系として、エンリケス曲面の自己同型群の中の有限位数の元が高々位数8であることがわかる。これは、エンリケス曲面の有限自己同型群の全体像を把握するための基礎的な結果である。半シンプレクティック自己同型群については、マシュー指標を持つ自己同型群の分類を正標数の穏やかな群に拡張した。これらの結果をまとめた論文「Bi-canonical representations of finite automorphisms acting on Enriques surfaces」「Finite groups of Enriques surfaces and the Mathieu group M_{12}(with S. Mukai)」を書き上げた。投稿中である。また、論文「Gorenstein Q-homology projective planes (with D. Hwang and J. Keum)」がScience China Mathematicsに採録されることが決まった。この結果と関連して、エンリケス曲面の上に特定の曲線配置を考えたとき、そのモジュライを考えるという問題が重要であることがわかった。 研究期間全体を通して、エンリケス曲面の有限自己同型や射影モデルについての理解が深まった。また、正標数の幾何への足掛かりもできたように思う。これらは、2次元の小平次元ゼロの多様体に関する、一般論からは推し量ることのできない定量的な一連の結果とみなすことができる。
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