研究課題/領域番号 |
23740015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千田 雅隆 京都大学, 次世代研究者育成センター, 助教 (00451518)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 岩澤理論 / 保型形式 / 保型L関数 / p進L関数 / p進周期 / 岩澤不変量 |
研究概要 |
今年度は楕円保型形式に付随する反円分的p進L関数の構成及びp進L関数から定まる岩澤不変量について研究を行った.BertoliniとDarmonは反円分的岩澤理論に関する一連の研究の中で楕円曲線に付随する反円分的p進L関数を構成し,Vatsalは楕円曲線に付随する反円分的p進L関数の岩澤μ不変量が多くの場合に零になることを証明した. 以上の背景を元に国立台湾大学のMing-Lun Hsieh氏と共同研究を行い,Bertolini-Darmonによる反円分的p進L関数の構成を重さが偶数の楕円保型形式の場合に一般化し,今まで(重さが2の場合を含む)あらゆる場合に未解決であった古典的なL関数の特殊値との関係(補間性質)を一般的に証明した.この結果は反円分的p進L関数に対して例外的零点予想の研究を行ったBertolini-Darmon-Iovita-Spiessらによる予想の解決を含んでおり,本研究課題の中心的テーマである例外的零点予想の研究の基礎になっていくと考えられる. さらにHsieh氏との共同研究において,上記のVatsalの結果を重さが偶数の保型形式の場合に一般化し,反円分的p進L関数から定まる岩澤μ不変量が多くの場合に零になることを証明した.Vatsal氏の結果はSkinner-Urbanによる保型形式に対する岩澤主予想の研究においても鍵となる部分で用いられており,今年度得られた結果はSkinner-Urbanの結果を一般化する上で今後重要になっていくと思われる.またHsieh氏との共同研究ではPollackとWestonによる保型形式に伴うp進周期の比較を一般化することにも成功した.これはSkinner-Urbanによる3変数p進L関数との比較を行うときなどにも必要となる結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は今まで未解決であった楕円保型形式に付随する反円分的p進L関数の補間性質を証明することに成功し,反円分的p進L関数の場合の例外的零点予想への応用も得ることができた.これは今後の例外的零点予想の研究および岩澤理論の研究において基礎となる結果であり,より一般的なHilbert保型形式の場合の研究に向けての重要なステップになっている.以上のことから,研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
岩澤理論の研究においては様々な分野からの手法や知識が使われる.今後は近年発展している保型形式の合同に関する理論,特に肥田理論やColeman familyの理論を用いることでp進L関数の研究を進めていきたい. 近年のBertolini-Darmonの研究はGL(2)の保型形式の理論にとどまらず様々な代数群上の保型形式やmodular多様体の幾何と関係付けて研究することが重要であることを示唆している.その中でもtriple L関数との関係を用いて研究を進めていくことが今後の研究の発展につながるのではないかと期待できる. Gross-Zagier公式の一般化がWei Zhangらによって精力的に研究が進められている.彼らの研究はp進類似を行う際にも重要であり,積極的に彼らの手法を取り入れていきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も関連する研究を行っている国内外の研究者と議論を行うための旅費として主に研究費を使用する予定である.その他,情報収集を目的として国内外の研究集会に参加するための旅費や関連する研究分野の書籍の購入費として研究費を使用する予定である.
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