研究概要 |
今年度はフランスのLyon高等師範学校のFrancois Brunault氏と楕円保型形式に対するRankin-Selberg L関数の整数点での特殊値に関するBeilinson予想についての共同研究を行った. Beilinson予想は代数多様体の代数的K群からDeligneコホモロジーへのregulator写像とnon-criticalな整数点におけるL関数の特殊値の関係を述べた予想であるが多くの場合は未解決である. 楕円保型形式のRankin-Selberg L関数の場合はBeilinson, Baba-Sreekantan, Bertolini-Darmon-Rotgerらによって重さが2の保型形式の組の場合に対し結果が知られており, 今年度のBrunault氏との共同研究において, 彼らのregulator写像についての計算結果を一般の重さの保型形式の組に対して拡張することができた. 重さが2の場合は二つのmodular曲線の直積に対するK群にmodular単数を用いて元の構成が行われていたが, 今回の研究においては二つの久賀-佐藤多様体の直積に対するK群にBeilinsonによるEisenstein symbolの理論と対角埋め込みの手法を用いることでL関数の特殊値と関連を持つ元を構成することに成功した. さらに新しい構成法を与えたことにより, 扱えるL関数の整数点の範囲を広げることにも成功した. 今回得られた結果はRankin-Selberg L関数の玉河数予想の研究において重要なステップを与えており, この結果のp進類似が本研究課題の中心的な研究対象であるp進L関数の特殊値を求めることに他ならない. さらに今回構成したK群の元は反円分的p進L関数とも関係していると考えられ, 反円分的岩澤理論への応用も期待される.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで得られてきた研究成果を踏まえたうえでp進L関数の特殊値やL不変量についての研究を進展させていく予定である. 特にKatzのp進L関数のnon-criticalな整数点における例外的零点予想についての研究を行い, GreenbergのL不変量の理論をcriticalではない場合にも拡張し, p進L関数の微分値との関連を調べていきたいと考えている. またBreuilによるL不変量に対するアプローチをより一般の代数群の場合へ拡張することもp進周期に関わる重要な問題と考えられることから, Breuilの理論の一般化についても取り組みたいと考えている.
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