研究課題/領域番号 |
23740017
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高木 聡 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (20456841)
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キーワード | 代数幾何学 / 非ネータ環 / 非可換環 / 圏論 / 環論 |
研究概要 |
非ネータ可換環およびその加群の理論の整備を引き続き進めてきたが、途中から非可換環上の加群の理論も含めるように拡張している。微分付き次数環への応用の他に、群作用に対する不変式環上の加群の分析などにねじれ群環の活用などが実際に有効だからである。また上三角行列環においてPoincare双対性に類似したTorとExtとの間の双対性が見いだされるということもある。 また、ホモロジー代数を用いた各性質の詳細な分類および特徴付けに入っている。これは実際に正則環(これは基礎環上の平滑射に対応する)の特徴付けに必要であり、また正則環とPrufer環の類似性を浮き彫りにさせている。 微分加群は非可換環にまで概念を拡張することができる。またそれはconnectiveな微分付き次数環から環への忘却関手の左随伴によって次数1の部分に自然に現出する。非可換環の場合でも不分岐性と無限小持ち上げとの関係は保たれるが、平滑性と無限小持ち上げの対応は難しい。平滑性はある種加群における射影性と性質が類似しており、有限表示性を仮定しないと局所判定法が一般に適応されない。一方で遠藤の定理と同様に基礎環が整域であればもう少し弱い条件である「有限生成」で局所判定が可能となる。 その他には、以前A-概型と称していたものが実は局所環付き空間であることと同値であることが分かった。これは局所環付き空間の圏が環の圏と十分近いことを示唆しており、概型上で定義されている各種概念を局所環付き空間にまで拡張すべきであることを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ノルム付き加群の圏の考察、および数論への応用の方面の研究はまだ進んでいない。これは代数としてノルム付き加群の公理化をどのようにするかを逡巡している(これはどの方向へ理論を発展させるか見通しが立たないといけない)からである。特に基礎体をどう定めるか:実数か、複素数か、数体かでその後が大きく変わってくる。またこの周辺の議論は凸体の幾何学(基礎体が実数の場合)との交差点となるが、その方面はまたトーリック多様体論以外に独立して発展している部分が多く文献収集に時間がかかることになっている。 一方で、非可換環の方面には理論が拡張できる可能性が高くなってきた。実際に「加群の圏」だけでなくそこにファイバー構造を付け加えることで非可換環でも淡中理論と同じく元の環を復元させることができる。またBarr-Beckの定理が非可換環の場合にも降下理論が成立することを保証するので、非可換スキーム理論の素地はできつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後はスキームというよりも局所環付き空間を主目標におくこととなる。可換環の圏と局所環付き空間の間に随伴が存在することから両者の間のギャップは非常に小さいと考えられ、可換環やスキームの各種概念を局所環上で考えるべきである。例えば分離性などはZariski-Riemann空間を扱う上では必須である。また非可換環までも視野におくためには底空間は位相空間よりも一般的なもので考えるべきだろう。サイトは一つの答えだが非可換環に通用するかどうかは吟味が必要である。 連接環上においては一般の加群を扱うのは非常に難しくなってくるが、連接加群に制限すればネータ環の場合と類似のホモロジー代数の理論が通用する。連接加群に対してのみ入射性が成り立つ加群をε入射加群と呼ぶことにすると、ε入射加群は入射加群と比べ構成しやすい。また実際に弱次元とε大域次元の一致が見られる。微分加群なども併せて調べるとZariski-Riemann空間が非特異多様体と同じく扱える可能性が出てくる。 もう一つ研究する価値があると思われるのは、非可換スキームの理論の構築である。Bondal-OrlovやBridgelandの例を挙げるまでもなく、代数多様体と非可換環は加群の導来圏ではその振る舞いが一致する減少がしばしば見られる。これはある種貼り合わせデータが非可換環の中に埋め込めるからであるので、この点はもっと追求する価値がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費が少なかったが、これは年度末の購入物品を事務処理の都合上次年度決済に回したためである。 次年度使用額で増えた分についてはいくらかを旅費に回す予定である。その他、電子機器および周辺設備の購入に充てる。
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