研究課題/領域番号 |
23740018
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
林田 秀一 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80597766)
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キーワード | 国際研究者交流 / ヤコビ形式 / ジーゲル保型形式 / ヒルベルト保型形式 / ドイツ / アメリカ |
研究概要 |
(1) 研究成果の内容: 昨年度得られた結果は以下の2つである。(i) 山崎正氏により得られていた一般次数ジーゲル・アイゼンシュタイン級数の一般化マース関係式を、他のすべてのヘッケ作用素(つまり局所ヘッケ環のすべての生成元)を用いて、精密化した。更に、これらの一般化マース関係式を、偶数次数の場合に、池田リフトへ応用することで、池田保により得られていた宮脇-池田リフトのスタンダード・エル関数の表示に、別証明を与えた。(ii) また、奇数次数での宮脇-池田リフティングのスピノル・エル関数の表示を得た。これは、ハイムにより得られていた次数3の場合の結果の一般奇数次数への拡張である。以上の2つの結果は論文にまとめ、雑誌に投稿中である。 (2) 研究成果の意義および重要性: ジーゲル-アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数を詳しく調べる事で、池田リフトおよび宮脇-池田リフトのフーリエ係数をより詳しく知ることができる。ジーゲル-アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数に深く関わるジーゲル級数の明示式については、桂田英典により得られているが、この明示式からジーゲル-アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数の間の関係式を得ることは難しく、ヤコビ形式のインデックス-シフト作用素(これはヘッケ作用素の類似で得られる)を用いる方法が、フーリエ係数の関係式を得ることに有効である。昨年度、このヤコビ形式のインデックス-シフト作用素を用いて、一般次数ジーゲル・アイゼンシュタイン級数の一般化マース関係式の精密化を行った。これは池田リフトや宮脇-池田リフトに応用することができる。実際に、(1)で述べた結果を得た。一般化マース関係式は、宮脇-池田リフトの周期やリフトの非零性、つまり(宮脇-池田リフトに関する)池田予想の証明に役立つこと、などが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
池田リフトと Eichler-Zagier-伊吹山対応を用いて、重さ半整数ジーゲル尖点形式を構成できることが既に知られている。この重さ半整数ジーゲル尖点形式のフーリエ-ヤコビ係数から得られるディリクレ級数(Kohnen-Skoruppa型, Yamazaki型)、の明示式を計算する予定であるが、まずは重さが整数の場合の指数シフト作用素での一般化マース関係式を精密化した。重さ整数と半整数の指数シフト作用素の間に直接の関係はない。しかし、一般化マース関係式を精密化することで、池田リフトで得られるジーゲル尖点形式の、フーリエ-ヤコビ係数の別の形のディリクレ級数(例えば、行列指数のフーリエ-ヤコビ係数の内積を分子に持つディリクレ級数) を考えることができ、これらは Kohnen-Skoruppa 型ディリクレ級数の新しい拡張であり、偶数次数ジーゲル尖点形式のスピノル-エル関数と関係するのではないかと考えられる。一般次数ジーゲル尖点形式のスピノル-エル関数の解析的性質や関数等式は Andrianov により予想はあるものの、未解決の問題である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ヤコビ形式の指数シフト作用素を用いて、ジーゲル-アイゼンシュタイン級数および、ジーゲル尖点形式のフーリエ-ヤコビ係数の関係式を調べる。具体的には、フーリエ-ヤコビ係数を用いてディリクレ級数を構成し、そのディリクレ級数を既知のエル関数で表示する。そのために指数シフト作用素の随伴作用素を計算し、作用素間の関係式を得ることで、ディリクレ級数の別表示を与える。また、精密化された一般化マース関係式を用いて、新しい形のディリクレ級数を構成し、スピノル-エル関数との関連を調べる。重さ半整数ジーゲル尖点形式へのリフトに関しては、一般次数へのリフトを保型表現を用いた別証明も考察する。指数シフト作用素のアデール化、また、行列指数ヤコビ形式と整数指数ヤコビ形式との同型対応についても、同時進行で調べたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外の研究者を招聘し、多変数保型形式に関する研究集会を開く。具体的には、ドイツや中国のヤコビ形式に関連する研究者を招聘する予定である。また、国内外の保型形式や整数論に関連する研究集会、セミナーに参加する。
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