研究課題/領域番号 |
23740022
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
安部 利之 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (30380215)
|
キーワード | 頂点作用素代数 / オービフォールド / C_2 有限性 |
研究概要 |
C_2 有限な頂点作用素代数のオービフォールド模型の C_2 有限性の証明に向けて,その一般的かつ具体的な例である置換オービフォールド模型について研究を行った.置換オービフォールド模型とは,n 個の頂点作用素代数に自然な n 次置換群の作用を考え,その作用に関する固定点のなす頂点作用素代数である.研究目的の一つである 「C_2 有限な頂点作用素代数の置換オービフォールド模型が再び C_2 有限である」という予想の解決に向けて, 本年度も前年度に引き続き n>2 の場合について考察した. 格子頂点作用素代数に関し, 置換オービフォールド模型の C_2 有限性の考察を前年度から継続して行ったが,十分な成果には至らなかった.一方で具体的な置換オービフォールド模型として sl_2 に付随するレベル 1 アフィン頂点作用素代数の巡回置換オービフォールド模型の構造について一橋大学の山田祐理氏から問い合わせがあり,その構造について共同で研究を開始した. この巡回置換オービフォールド模型については,2 及び 3 個のテンソル積の場合は既に知られている結果があったが,4 個以上の場合には少しの事実を除いて構造がまったく知られておらず,その構造の解析には系統だった方法がなかった.そこで置換オービフォールド模型という事実を積極的に用いることで指標の計算をする方法を考え出し.その指標を100次の項位までを決定する方法を発見した. この指標の計算はテンソル積の個数が 4 個以上の場合でも実行できるが,4個の場合の結果とその他の事実を組合せて構造に関する予想を立てることができた.さらなる研究の結果,実際にその予想が正しいことが証明できた. 以上の研究成果については平成26年3月に京都大学数理解析研究所で行われた研究集会「有限群とその表現、頂点作用素代数、代数的組合せ論の研究」において成果発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は研究計画通り生成元を見つけ,関係式を列挙することで C_2-有限であるための条件を探すことを試みていたが,Virasoro 代数や Heisenberg 代数に付随する具体的な頂点作用素代数について有限個の生成元の発見は非常に困難であり,比較的計算しやすいと思われる格子頂点作用素代数についても考察したが,部分的な結果しか得られず,課題達成に対し十分な成果は得られなかった.そこで当該年度の後半あたりから,生成元からの観点と平行して表現論的観点から考察を開始した.その考察については最終段階までは比較的スムーズにたどり着いたが,最終段階の部分で生成元の観点からの考察のときに現れた困難と本質的に同様の困難にぶつかったため現在も研究中である. ただこの表現論的観点からの研究が2年目の研究結果との間に何らかの関係があるであろうことが発見でき,その解釈に別の意味を見いだすことができた.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は研究計画を少し変更し,極小系列に属する Virasoro 頂点作用素代数のうち c=-22/5 の物を考察する.この頂点作用素代数はユニタリ系列に属さないためそれほど良く研究されているわけではないが,比較的扱いやすく,既約加群が二つのみであるなど表現論的にも考えやすい物である.その頂点作用素代数を具体的に解析することで,生成元及び表現論的観点の両面から一般の n についての研究課題の達成を試みる.更にイジング模型と呼ばれる狭小系列に属する Virasoro 頂点作用素代数についても考察する.同時に研究過程において一般の頂点作用素代数に対して研究課題を達成するための方針も模索する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
いくつかの出張予定があったが,諸事情により長期の出張が困難となったため,その分の旅費を繰越しとした. 今年度は科研費採択課題の最終年度ということで,当初の予定以上の出張を行い,研究連絡及び研究報告を行う.また現在使用している計算機の処理が遅くなるなど研究に支障をきたし始めたので,計算機も早い時期に購入する予定である.
|