今年度は昨年度に定義した、次数2のジーゲル多様体上定義される法pジーゲル保型形式上に作用する4つのテータ作用素達の像と核の決定に取り組んだ。このことは、いくつかのテータ作用素の組み合わせからなるテータサイクルの重さの変動を理解するのに必要となる。その結果、法pジーゲル保型形式が超特異軌道上恒等的に0ではなく、かつ素数pがある重さから定まる整数を割らないとき、テータ作用素の像は消えないことが分かった。消える場合はその形式が法p特異形式になっているのではないかという予想を与えた。 上記の結果を用いて、テータサイクルを3種ほどガロア表現の性質と関係するように照らし合わせながら定義し、重さの変動を調査した。その結果、Edixhoven がGL(2)のときに得たような類似の結果を得ることができた。次数2のときにはテータサイクルの中で重さがジャンプする部分が高々二ヶ所あるが、単純な組み合わせ論的議論から二回はジャンプしないことを証明できたことは意外な事であった。 上記のテータサイクルは法pジーゲル保型形式に付随するガロア表現を円分指標で捻った時に、どういう重さの法pジーゲル保型形式が付随するのかを把握するのに必要であり、このことはセールの重さ予想の解決には重要である。
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