研究課題/領域番号 |
23740028
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
月岡 透 東海大学, 理学部, 講師 (30508403)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ファノ多様体 |
研究概要 |
4次元以上の非特異ファノ多様体の構造を解明することを目標として研究を進めた。極小モデル理論の枠組みの中で、特に端射線収縮の理論を駆使することにより、明示的な分類を行った。因子(チャーン類)の交点理論や有理曲線の変形理論を基礎とした分類手法を洗練し、統一的な理論構築を行うことが最終的な目標であるが、当該年度は主に4次元のファノ多様体について考察した。4次元ファノ多様体のピカール数についてはC.Casagrandeによるいくつかの論文があるが、明示的な上限は未だ得られていない。そこで、構造がやや複雑なファノ多様体(たとえばフリッピング収縮を持つ場合)を調べ、いくつかの成果があった。例えば、例外集合が複数の連結成分を持つ4次元ファノ多様体の例を構成することができた。残念ながら、この例においてピカール数はそれほど大きくなく、C. Casagrandeの与えている「フリッピングを持つ4次元ファノ多様体のピカール数は7以下か?」という問題について新しい結果を得るには至らなかったが、今後の研究手法について重要な手がかりを得ることができた。一般に代数多様体の性質を調べるのに、それに付随する組み合わせ論的対象(曲線の錐、ネフ因子の錐、有効因子の錐など)を考えることが本質的である。ファノ多様体に対しては、一般論により、これらは非常に簡明な構造を持つことが知られているが、ブローアップなどの双有理変換によって複雑に変化し、統一的に記述する手段は知られていない。そこで、さまざまなファノ多様体についてネフ因子の錐の構造を明示的に考察し、特に4次元の場合は上記の例をはじめとしたいくつかの場合について、ネフ因子の錐と有効因子の錐の生成元を記述することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高次元ファノ多様体分類の理論的枠組み(ファノ多様体上の標準因子や例外因子などの特殊な因子についての交点数の統一的な計算)を構築することはできなかったが、4次元において興味深いファノ多様体の例を構成することができた。また、特殊な因子を含む場合やフリッピング収縮を持つ場合についてファノ多様体のネフ因子の錐を詳しく調べ、生成元を計算することができている。これらの具体的な成果は、今後の研究を推進するにあたって非常に役立つと思われるので「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
4次元ファノ多様体のピカール数の上限は18であるという予想を目標に研究を推進する。この予想の解決は難しいと思われるが、これを中心としてファノ多様体の性質をさまざまな観点から明らかにすることができると思われる。端射線収縮の幾何構造からファノ多様体の大域的な構造を決定するという考えと併せて、ファノ多様体のピカール数の上限を与える不等式(向井予想)を「端射線の長さ」や「端射線の本数」など曲線の錐に関連した数値的情報により定式化し、高次元における解決を目指す。同時に、ファノ多様体と類似した多様体のクラスについても考察する。特に重要なのは、反標準因子がnef and bigの場合と反標準因子がstrictly nef(任意の曲線との交点数が正)となる場合である。後者では、結果的にファノ多様体になることが予想されている(Campana,Peternell)ので、これについて考察する。これらのやや広いクラスの多様体と対比させながら、ファノ多様体の性質を幅広い視点から明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
代数幾何学関連の書籍購入や国内外の研究集会参加のための旅費として使用する。
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