研究課題/領域番号 |
23740028
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
月岡 透 東海大学, 理学部, 講師 (30508403)
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キーワード | ファノ多様体 |
研究概要 |
4次元以上の非特異ファノ多様体の構造を解明することを目標として研究を進めた。代数多様体上の因子(より一般に輪体)の交点理論および有理曲線の変形理論を基礎とした分類結果を整理し、高次元ファノ多様体に関して統一的な性質(たとえば、ファノ多様体の指数やピカール数についての向井予想)を得るのが大きな目標であるが、当該年度は主に4次元のファノ多様体のネフ錐や有効因子の錐について調べた。端射線収縮に関連して、4次元の場合は、フリッピングの例外集合は射影平面に同型であり、複数個の既約成分が存在する。そこで、実際に複数個の既約成分をもつ4次元ファノ多様体の例をいくつか構成した。これらの例についてネフ錐の構造を記述することもできた。一方で、射影空間などの特別な代数多様体を因子として含むファノ多様体について考察し、おおまかな分類をした。これらの得られた例についてもネフ錐の構造を記述した。最近、Casagrande-Druelはピカール数が3のファノ多様体で特殊な因子を含むものを、スケールつき極小モデル理論を用いて分類している。特に、フリッピングを持つ場合が興味深いが、Casagrande-Druelの論文では特異点を持つ多様体にも適用できる巧妙な交点数の計算をしている。この手法を取り入れて、射影空間を含むファノ多様体でピカール数が2であるものを考察した。これについては明示的な分類に至っていないが、交点数に関していくつかの条件を課した状態では、ある種の分類結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高次元ファノ多様体をスケール付き端射線収縮の理論を用いて研究するのが目的であるが、4次元のファノ多様体についてフリッピングを持つ興味深い多様体の例についてネフ錐の構造を記述することができている。さらに、射影空間を因子として含むファノ多様体についても、Casagrande-Druelの手法を取り入れ、おおまかな分類ができている。これらの具体的な研究成果から、今後の研究をさらに推進するための手がかりが得られることが期待できると判断したため。
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今後の研究の推進方策 |
射影空間を因子として含むファノ多様体をCasagrande-Druelの結果を踏まえて、一般次元で完全に分類する。そのため、有理曲線の変形理論や、因子および輪体のチャーン類の交点理論を特殊な場合に適用し、ファノ多様体の因子や曲線の幾何的情報を得る。同時に、ファノ多様体に類似したクラスについても考察する。ファノ多様体はブローアップする過程において、その反標準因子は少しずつ正値性を失っていくが、正値性がなくなるときに多様体のネフ錐がどのように変化するかを調べる。また反標準因子がnef and bigまたはstrictly nef となる代数多様体についても考察する。このようなやや大きなクラスの多様体とファノ多様体を比較しながら、ファノ多様体の性質を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
代数幾何学関連の書籍購入や国内外の研究集会参加のための旅費として使用する。平成24年度中は海外出張を数回予定していたが、研究の進捗状況などの関係から、海外出張は1回のみにとどまり、平成24年度から平成25年度へ助成金の繰越が発生した。今年度は10月にフランスのマルセイユに出張するなどし、研究費を使用していく予定である。
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