非特異ファノ多様体は3次元まで分類されている。一般に、代数多様体には「曲線の錐体(cone of curves)」が対応し、標準因子が負になる部分の端射線を調べるのが重要である。ファノ多様体の場合は、曲線の錐体は有限個の端射線によって生成され、それぞれの端射線に付随する収縮射の情報を利用してファノ多様体の分類ができる。このように端射線収縮の理論を用いれば、4次元以上の分類もある程度可能であるが、問題設定としては漠然としている。したがって、高次元ファノ多様体を特殊な場合に限定し、部分的に分類するのが現実的である。そこで、今年度は前年度に引き続き、「小さな収縮写像(small contraction)」を持つファノ多様体を研究した。ここで言うところの小さな収縮写像とは、例外集合の余次元が2以上となる双有理射のことである(双有理射の典型例であるブローアップは、因子をつぶす、つまり例外集合の余次元が1なので、小さな収縮写像ではない)。双有理射の構造は一般に複雑であるが、ブローアップの組み合わせによる小さな収縮写像の簡明な構成法が知られている。より詳しくいうと、曲線と余次元2の部分多様体を順次ブローアップすることにより、小さな収縮写像を持つ代数多様体が得られる。この構成法を利用して、射影空間や2次超曲面などをブローアップして小さな収縮写像を持つファノ多様体の例を作ることができた。前年度に引き続き、さまざまな例を調べ、ネフ因子の錐体および有効因子の錐体を具体的に記述した。また反標準因子の自己交点数の計算も行い、多様体の構造を詳しく調べた。以上の明示的な計算結果を用いて、射影直線と射影空間の直積に上記の構成法を適用して得られるファノ多様体を条件付きで分類することができた。
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