研究課題/領域番号 |
23740030
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
萩原 啓 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (30512173)
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キーワード | 代数的K理論 / 対数的幾何学 / 代数的サイクル |
研究概要 |
(Grothendieck-)Riemann-Rochの定理は、代数多様体ないしスキームの不変量に関する定理であり、代数幾何ならびに数論幾何において基本的な道具の一つである。これを対数的代数多様体ならびに対数的スキームのカテゴリーへ拡張することは当該分野において重要な課題の一つである。 さて、通常のRiemann-Rochの定理にはTodd類に由来してBernoulli数と呼ばれる数が、また、対数的Riemann-Rochの定理においては、層やベクトル束の境界における振る舞いを反映して一般Bernoulli数が自然に現れるが、これらの数はRiemannゼータないしDirichlet L函数の特殊値とみなすことができる。 そのように見なすことで、これらの数は解析的整数論と関係を持つのみならず、p進解析的に大変美しい振る舞いや、イデアル類群などの数論的不変量との真に深いつながりを明らかにする。 したがって、対数的Riemann-Rochの定理に対しても、これらのことを考慮に入れて定式化し直すことが、代数的整数論や数論幾何への応用を見込むに当たっては重要となると思われる。 以上の観点の下、本年度は当該Riemann-Rochの定理の、数論的意義がより明らかになるような定式化について考察した。具体的には、対数的Riemann-Rochの定理の定式化に現れるKummer etale K群のAdams作用素による分解を考慮して公式を変形することで、特別な場合にではあるが、Dirichlet L函数がより明示的に表れるような形にできることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に計画として挙げた、非特異とは限らない場合の対数的Riemann-Rochの定理については大きな進展は見られないものの、もう一つの目標であった、対数的Riemann-Rochの定理から得られる不変量のp進的挙動に関しては、特別な場合にではあるが、当該定理の再定式化を通じて、興味深いと思われる現象が発見された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った対数的Riemann-Rochの定理の再定式化をより一般の場合にも行い、また、その形の当該定理を数論的に重要な代数多様体に適用することで、それらの数論的不変量に関する応用を考察する。 また、本年度に行えなかった、非特異とは限らない場合の対数的Riemann-Rochの定理の定式化および証明についても、引き続き考察する。
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