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2012 年度 実施状況報告書

高次元ディオファントス近似であるボエタ予想の,ブローアップ及び力学系設定での解決

研究課題

研究課題/領域番号 23740033
研究機関日本大学

研究代表者

安福 悠  日本大学, 理工学部, 助教 (00585044)

キーワード数論的力学系 / ボエタ予想 / 整数点と有理点 / アーベル多様体 / モーデル・ラング予想 / ヒルベルト第10問題 / 国際研究者交流 / アメリカ:イタリア
研究概要

「研究の目的」,及び24年度「研究実施計画」の通り,ボエタ予想と力学系のつながりについて研究を続けた.ボエタ予想は,代数幾何学的性質により整数点の頻度が制御されることを言及するが,関連のある定理として,Faltings氏やVojta氏により準アーベル多様体上で証明された,モーデル・ラング予想がある.モーデル・ラング予想の力学系類似については近年Ghioca氏,Tucker氏,Zieve氏らを中心に多数の論文が出版されているが,今年度は,この類似が一般には全く成り立たないことを,カリフォルニア大学バークレー校教授のScanlon氏との共同研究で証明した.24年5月にバークレーで開かれた力学系研究集会で招待講演を行った際,及び10月に訪問した際の研究討議が大変役に立ち,帰国後すぐに論文を共同執筆し,International Mathematics Research Noticesへの掲載が決まった.「大変驚きかつ深遠な結果」と査読者にも評価された主定理は,指数多項式の解として書けるような自然数のどんな部分集合も,点と自己写像と部分多様体をうまく選ぶと,写像のn重合成により点が部分多様体上に動かされるようなnの集まりとなる,と主張する.実際には上記の多次元版を証明した.この結果,「力学系の多数の問題が決定不能である」という,ヒルベルト第10問題とも関連する数学基礎論の重要な結果も導けた.
このほかには,ローチェスター大学准教授のTucker氏を招聘し,p進uniformizationの見識を深めた.特に射影平面上の射に関し,ボエタ予想を仮定せずに軌道上整数点の有限性を証明する方法について研究討議した.この結果,無限個の軌道点が直線上に存在する場合を部分解決することができ,25年度中に論文を発表する予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

24年度は,ボエタ予想と関連の深いモーデル・ラング予想に関し,力学系類似が全く成り立たないという,大変意外で,かつ力学系問題の決定不能性をも導ける深遠な結果が得られたので,研究は順調である.また,射影平面上の射による軌道の整数点の有限性に関しても,不分岐を仮定せずに証明できる部分的な結果を得られたので,計画通りに進んでいる.まだ周期的な線を有効的に見つけ出す方法を発見できていないため, 25年度以降の継続研究となるが,着実に研究は進んでいるといえる.

今後の研究の推進方策

順調に研究は進んでいるので,24年度の研究の継続と,当初の研究実施計画を実行する.具体的には,射影平面上の射の場合の軌道上整数点の有限性について,周期的に動く線を有効的に見つける方法を考察する.これを見出せると,無限個の軌道点が直線上にのる場合については,予想を一切使わず無条件に完全解決できることになり,24年度の研究からさらに進展する.また,当初の予定通り,楕円曲線の積のブローアップ上やK3曲面上でのボエタ予想,及びこれらの空間上での力学系について取り組む.これらについてはまだ殆ど結果がないので,ファルティングスの積定理や高さ関数,24年度に発表されたSilverman氏の論文などを使えないか検討し,特別な条件を満たす場合においてだけでも証明できないか研究する.

次年度の研究費の使用計画

23・24年度と同様25年度も,研究者の招聘,及び申請者の出張により,専門家との研究討議を行うことで,新しいアイディア・発想に触れ,研究を進展させていく.6月に台北で開かれる力学系の研究集会に参加予定で,同じく参加予定であるウディネ大学のCorvaja氏と周期的な線の発見方法について議論する.また,9月にフランスで開かれる研究集会において,ディオファントス近似の最新の結果について見識を深め,高次元代数多様体への応用性について考察する.また韓国の崇実大学校のLee氏を招聘し,軌道上整数点の問題を有理写像に拡張できないか,研究討議する予定である.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Exponential-polynomial Equations and Dynamical Return Sets2013

    • 著者名/発表者名
      Thomas Scanlon and Yu Yasufuku
    • 雑誌名

      International Mathematics Research Notices

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] The Failure of Dynamical Mordell-Lang Conjecture2013

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      University of Udine Number Theory Seminar
    • 発表場所
      ウディネ大学
    • 年月日
      20130314-20130314
    • 招待講演
  • [学会発表] Exponential Diophantine Equations and Dynamical Mordell--Lang2013

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      Diophantine Analysis and Related Fields
    • 発表場所
      日本大学理工学部
    • 年月日
      20130109-20130109
    • 招待講演
  • [学会発表] Integral Points and Zsigmondy Sets of Orbits2012

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      New Developments in Complex Dynamical Systems
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 年月日
      20121214-20121214
    • 招待講演
  • [学会発表] Various Versions of Vojta's Conjecture2012

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      New Developments in Complex Dynamical Systems
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 年月日
      20121213-20121213
    • 招待講演
  • [学会発表] Vojta's Conjecture on Surfaces2012

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      函数論シンポジウム
    • 発表場所
      金沢大学
    • 年月日
      20121124-20121124
    • 招待講演
  • [学会発表] 力学系モーデル・ラング問題について2012

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      京都大学数論合同セミナー
    • 発表場所
      京都大学理学部数学教室
    • 年月日
      20121012-20121012
    • 招待講演
  • [学会発表] Coordinates of Forward Orbits in Projective Space2012

    • 著者名/発表者名
      Yu Yasufuku
    • 学会等名
      Algebraic Dynamics Workshop
    • 発表場所
      カリフォルニア大学バークレー校
    • 年月日
      20120512-20120512
    • 招待講演
  • [備考] Yu Yasufuku's Page

    • URL

      http://www.math.cst.nihon-u.ac.jp/~yasufuku/

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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