研究課題/領域番号 |
23740033
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安福 悠 日本大学, 理工学部, 助教 (00585044)
|
キーワード | 数論的力学系 / ボエタ予想 / 整数点と有理点 / 不変多様体 / 高さ関数 / 国際研究者交流 / フランス:韓国:アメリカ |
研究概要 |
本年度は,射影空間上の射の不変多様体の有無の判定方法を調べるため,また不定点を持つような,射ではない有理写像に関して新しい高さ関数を構築するため,研究協力者である韓国の崇実大学校のC.G. Lee氏を招聘した.Lee氏の先行研究では,不定点集合がある一つの超平面に含まれている必要があったのだが,この条件をなくしても,ある種の高さ不等式が満たされることが分かった.高さ不等式の主張はより弱くなってしまうが,高次元における有理写像の数論的力学系はまだ殆ど理解されていないので,意義の深い結果である.この共同研究を共著論文として現在執筆中であり,国際ジャーナルに投稿する. また,3月にフランスのルミニー数学研究所で開かれた研究集会「Lang予想とVojta予想」に出張し,講演をするとともに,参加者と研究討議を行った.講演内容は,高次元における軌道の整数点の稠密性についてで,これはBull. Inst. Math. Acad. Sinicaに掲載予定である.Vojta予想を仮定して得られる一般の定理,及びVojta予想を回避して得られる具体例に分けて説明した. この講演後,研究協力者のA. Levin氏と研究討議し,2次元に限定し,ボエタ予想を仮定せずに一般的に軌道の整数点の稠密性について言及できるか考察した.射影平面から因子の引き戻しを除いた部分の,対数的小平次元が-∞と0の場合を,2次元開多様体の分類論を用いて解決した.あとは対数的小平次元が1の場合であり,完了次第,この共同研究を共著論文として執筆し国際ジャーナルに投稿する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は,軌道上の整数点のZariski稠密性,及び軌道の整数点の数論的性質について2本論文を執筆し,一本はBull. Inst. Math. Acad. Sinicaに掲載予定である.ボエタ予想を仮定して得られる定理とボエタ予想を回避する具体例とを,射の場合と有理写像の場合双方で得られたので,研究は順調である.また,現在執筆中の論文が2本あり,本研究最終年度の26年度に完成できる見通しがたっている.一本目は,研究協力者のLee氏との共同研究で,より一般の有理写像でも成り立つ高さ不等式について,2本目は研究協力者のLevin氏との共同研究で,射影平面の場合の軌道の整数点についてボエタ予想を仮定せずに一般的に扱うものである.
|
今後の研究の推進方策 |
23・24・25年度同様,研究者の招聘,及び申請者の出張を通し,専門家との研究討議を行うことで,新しいアイディア・発想に触れ,研究を発展させていく.まずは,研究協力者のLee氏との有理写像に関しての高さ不等式についての共同研究,及び研究協力者のLevin氏との射影平面上での軌道の整数点に関しての共同研究を究め,論文にまとめる作業を行う.両氏とは引き続き密に連絡を取り合う.また,5月には米国Palo Altoの研究所で高次元代数多様体の整数点と有理点に関しての研究集会が,9月にはカナダのバンフ研究所でボエタ予想についての研究集会が開かれ,双方に招待されている.これらの学会の参加者との研究討議で,知見を広め,ボエタ予想の特に曲面上での解決の糸口にしていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
招聘する予定であった国内研究者との日程調整ができなかったため. 26年度に招聘し,力学系への見識を深める予定である.
|