研究課題/領域番号 |
23740040
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邉 忠之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70467447)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Morse理論 / Chern-Simons摂動理論 / Morse homotopy / Morse-Novikov理論 / 3次元多様体 / 勾配ベクトル場 / グラフ複体 / 位相不変量 |
研究概要 |
円周値のモースホモトピー理論による3次元多様体の不変量の構成を試みた。その結果、グラフ・フローのmoduli空間のコンパクト性さえ示されれば不変量が問題なく定義できるというところまで来た。モースホモトピー理論とは、複数のモース関数を一度に考え、各辺が複数のうちの一つのモース関数の勾配ベクトル場に沿うグラフ状のフローを数えて一次結合をとった値によって多様体の位相不変量を得る方法であり、深谷賢治氏により開発されたものである。深谷氏は特に2ループのグラフに対するモースホモトピー理論によって3次元多様体の不変量を構成していた。本研究以前に私は深谷氏の構成をホモロジー球面の場合に限って一般のループ数を持つグラフに対し一般化していたが、この度その結果を論文にまとめた(arXiv:1202.5754)。これはR値のモースホモトピー理論の結果であったが、その詳細をまとめたことは、本研究の円周値の場合にも使えることが多くあり有益であった。円周値と実数値の場合で違うのは、関数の変形の過程で、1.臨界点から出て同じ臨界点に入る閉軌道が生じることと、2.モース関数のRへのリフトの定義域が無限被覆であるためコンパクトでないということである。1については、臨界点から出て同じ臨界点に入る閉軌道が生じるときにノビコフ複体に起こりうる変化を具体的に記述し、その記述を使い不変量の候補が不変に保たれることを確認した。2は、これがあるためにグラフ・フローのmoduli空間のコンパクト性が保障されない。コンパクト性の証明はまだできていないが、既知の事実(大槻知忠氏の、量子群の表現を使った不変量の構成が発散せずに定義されていることなど)からその成立は正しいと推測される。私の不変量がうまく定義されれば、大槻氏の不変量がそうであるように、1次ベッチ数が1の3次元多様体に対する大変強力な不変量であることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円周値のモースホモトピー理論による3次元多様体の不変量の構成が目標であったが、グラフ・フローのmoduli空間のコンパクト性以外の部分は全て完成しているから。
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今後の研究の推進方策 |
ノビコフ複体に起こりうる変化を具体的に記述したことを、独立した論文にまとめる。円周値のモースホモトピー理論におけるグラフ・フローのmoduli空間のコンパクト性を研究する。申請書に書いた、球面ファイバー束の有理ホモトピー分類の研究をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費の節減の結果生じた使用残について、研究発表・打ち合わせのための旅費の支払いに使用する。
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