円周上のファイバー束であるような有向閉3次元多様体M上の「アミダくじ的パス」というものを考案し、本研究の目的であるZ同変摂動的不変量の構成に応用した。アミダくじ的パスとは、M内のある種の区分的に滑らかな経路である。閉じたアミダくじ的パスを符号付きで数えてできる形式的べき級数は、Mのファイバー構造から決まるレフシェッツゼータ関数の対数微分となる。また、アミダくじ的パスのモジュライ空間のコンパクト化からMの同変2点配置空間への自然な写像は、Mの同変2点配置空間における「基本的」な有理関数体係数相対4サイクル(同変プロパゲーター)を具体的に与える。これの重要なポイントは、Mの同変2点配置空間におけるサイクルの同変交差により、発散しない量が得られることであり、またそれはM内の軌道を数えることにより具体的に計算できることである。これにより、少なくとも円周上のファイバー束であるような有向閉3次元多様体に対しては、同変摂動的不変量の構成のための困難が解消された。M内の3価グラフで、各辺がアミダくじ的パスとなっているものを数えることにより、ファインマンダイアグラムの級数が得られ、それがZ同変摂動的不変量の候補となる。ホモロジー3球面に対しては、摂動的不変量を使うことにより、有理数値の有限型不変量の構造がクーパーバーグ・サーストンによって完全に決定されているが、Z同変摂動的不変量を使って正の1次ベッチ数を持つ3次元多様体の有限型不変量の構造を調べることは、今後の課題である。以上のことを一般の3次元多様体へ拡張することも期待できる。
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