本年度は,ユークリッド変換群より大きい群が働く停留曲面の1つである,三次元射影空間内のDemoulin曲面についてのループ群によるアプローチによる特徴付けを試みた.結果として,射影空間内の曲面から自然に定まるガウス写像を与え,そのガウス写像が特別な調和写像(原始写像と呼ぶ)になる事と曲面がDemoulin曲面である事の同値性を示した. 研究期間全体として,達成された成果としては次のようになった.平成23年度は三次元ハイゼンベルグ群内の平均曲率一定曲面に対して,ループ群を用いた定式化を行い,特に極小曲面に対してはワイエルシュトラス型の表現公式を導出した.平成24年度には,三次元球面内のガウス曲率一定K<1の曲面のワイエルシュトラス型の表現公式を導出した.またループ群の作用から導出される離散ソリトン方程式を調べ,離散mKdV方程式を新しくループ群の作用から求めた. 研究目標であった「ユークリッド変換群より大きい群が作用する幾何学における停留曲面に対して,ループ群を用いた統一的なワイエルシュトラス型の表現公式の実現およびその応用」について,完全には達成されてはいない.しかしながら,新たな知見によりこの研究目標を位相幾何・数理物理の問題と関連付け研究する事の重要性に気づき,新たな研究課題「ループ群による曲面のワイエルシュトラス型の表現公式とその応用」として引き続き研究していく事とした.
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