研究課題/領域番号 |
23740046
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
田中 利史 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (60396851)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流(韓国) |
研究概要 |
この研究の目的は結び目のジョーンズ多項式等の量子不変量の,結び目コボルディズムに関する位相的性質を明らかにすることである。 私はこれまで結び目の量子不変量であるジョーンズ多項式やカウフマン多項式などを用いた結び目コボルディズムに関する結び目の分類の研究を行ってきた。一方,アレキサンダー多項式は結び目コボルディズムの分野で重要な性質をもつ量子不変量の一つとして古くより知られている。私は任意の素な結び目Kに対し,その結び目と同じアレキサンダー多項式をもつ素なサテライト結び目で,結び目群がすべて異なり,また結び目群がKの群への準同型を許容するような結び目の無限族を構成した。結び目群の間の写像の存在を調べることは,研究計画の目標1の後半に述べた結び目群の表現の性質を調べる際にも重要である。目標1における研究対象となっているリボン結び目について,この手法を適用すると,アレキサンダー多項式が自明なリボン結び目で,上で述べた性質を持つ結び目の無限族が構成できることが分かった。アレキサンダー多項式が自明な場合,リボン結び目からはじめて,この手法を用いてリボン結び目でない結び目がどのくらい構成できるかを調べることが今後の課題である。 次に空間グラフの量子不変量を用いた結び目コボルディズムに関する研究を行っている。この研究は結び目コボルディズムの研究において,結び目がリボン結び目かどうかを調べる際に重要な役割を果たすものであるが,これまで研究が進んでいない分野である。私は空間グラフのサイクルで表される結び目に注目しそのサーストン‐ベネカン数を考えることにより空間グラフの性質を調べ,昨年,発表されたO'Donnol-Pavelescuの空間グラフの研究に関して具体例を初めて構成することができた。さらにサイクルがリボン結び目かどうかを調べるためにカウフマン多項式を用いて研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リボン結び目のジョーンズ多項式に関する研究では,リボン結び目の例である対称和の場合にいくつかの公式を得ることが出来たため,特別なリボン結び目の族に関してジョーンズ多項式の対称性が得られる等の成果を得ることができた。 しかし,リボン結び目の特徴づけに関する重要なラムの予想である,すべてのリボン結び目は対称和表示を持つかという予想は未解決であり,より強力な手法を編み出すことが必要である。そのために私は対称和に対し,新たにねじれ数と呼ばれる不変量を定義し,いくつかの計算例を与えることができた。 また,アレキサンダー多項式が自明な結び目は結び目コボルディズムの研究を行う際に重要であるが,サテライト結び目に関して基本群が異なる無限族の構成法を与えることができた。 さらに,空間グラフの性質を用いた結び目コボルディズムの研究は始めたばかりであるが,空間グラフについての結び目コボルディズムに関連する新たな不変量の具体的な計算例を与えることができ,O'Donnol-Pavelescuの空間グラフの研究結果に関する具体例を初めて構成することができた。実際,このような例を用いることで,空間グラフのサイクルがいつリボン結び目となるかを調べることが可能となった。今後はさまざまな空間グラフに対して不変量の計算を行い,結び目コボルディズムに関する研究に応用していきたい。 以上の研究においては,研究の新たな展開が期待でき,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ジョーンズ多項式やアレキサンダー多項式以外の量子不変量についても,リボン結び目の族に対して原理的には公式を求めることが可能な場合あるが,一般に非常に複雑な形となり,具体的な問題に用いることは困難である。したがって,リボン結び目の重要な例である木下‐寺坂型の対称和の場合にホムフリー多項式やカウフマン多項式の公式を求める。このとき,どのような位相的性質が反映されるかに注目し,その一般化について考える。 一方で,リボン結び目の研究手段として,空間グラフを用いた研究を進める。具体的には,空間グラフのサイクルを結び目と見なし,それがいつリボン結び目となるかを,ホムフリー多項式やカウフマン多項式から得られる不変量を用いて調べていく。いくつかの具体例の計算に成功しているが,さらにさまざまな空間グラフに関して研究を進め,リボン結び目の性質の研究に応用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果作成及び発表をおこなう上で必要となるためノートパソコン及び関連するソフトウェアを購入する経費として使用する。数学の研究にあたって,数学の書籍や論文雑誌等は不可欠である。そのためそれらを購入するための経費として使用する。 さらに,論文や書籍から得られる以外の情報は直接,他研究者から講演に参加するか,直接研究打ち合わせをする等の手段により得る必要がある。従って,他大学でのセミナーや研究集会への参加,研究打ち合わせ,情報交換・収集をするための旅費等の経費として使用する。 また,研究の促進のため,研究者を召集し講演を依頼するための経費として使用する。その他,文房具等の消耗品の経費として使用する。
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