研究課題/領域番号 |
23740054
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
澁谷 一博 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00569832)
|
キーワード | 微分式系(アメリカ) |
研究概要 |
微分式系(多様体上の接空間の部分束)の理論、田中理論を用いて微分方程式の幾何学的構造を研究した。特に2独立変数1未知関数2階の単独型偏微分方程式の中でtype-changing方程式と呼ばれる微分方程式を詳細に研究した。 2独立変数1未知関数2階の単独型偏微分方程式は双曲型、放物型、楕円型に分類されるがtype-changing方程式とは局所的に放物型のまわりに双曲型、楕円型が混在する方程式である。type-changing方程式は曲面論等の研究の際にも表れる重要なクラスの微分方程式である。申請者は以前から研究協力者の野田尚廣氏と共同研究行っているが、そこでは ある種の正則性を仮定したクラスのtype-changing方程式に対して2独立変数1未知関数2階の過剰決定系の理論を適用して研究していた。そのような中、今回は同様の正則性を仮定したクラスのtype-changing方程式に対して単独型偏微分方程式の理論の中で重要な不変量であるMonge特性系を対応させ、そのMonge特性系の退化現象を明らかにした。さらにその退化現象と以前の過剰決定系の理論を用いた研究の退化現象が完全に対応することを明らかにすることに成功した。 上記成果は論文にまとめて『Type-changing PDE and singularities of Monge characteristic systems』として現在投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね当初の研究計画通り進んでいて、上記の研究実績で述べた成果が出ている。 研究の目的である"特異性を持つ2独立変数1未知関数2階の偏微分方程式の研究"に関して既存の不変量(Monge特性系)の特異性との対応が明らかにできた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の成果により2独立変数1未知関数2階の単独型偏微分方程式に対応するある種の正則性を仮定したtype-changing方程式のクラスのMonge特性系の退化現象が明らかになった。これに対し今後以下のような研究を行っていく。 ・ある種の正則性を仮定していたが、その仮定を外したさらに一般のtype-changing方程式のMonge特性系の構造を明らかにする。 ・type-changing方程式に対してMonge特性系以外の微分式系の既存の不変量(symbol algebra, 派生系, Cauchy特性系など)の構造を明らかにする。 ・2階単独型方程式に対応するtype-changing方程式以外にも過剰決定系や高階偏微分方程式に対応するtype-changing方程式に対しても同様の研究を行う。特に延長理論を通して位相構造の観点からtype-changing方程式の特異性を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の推進には研究協力者であるIan Anderson氏、山口佳三氏、野田尚廣氏、矢野充志氏らとの打ち合わせが必要でありそのための旅費等が不可欠である。また本研究は微分方程式、微分幾何学、トポロジー、代数幾何学等が交わる分野の研究であり研究協力者のみならず、それらの分野の専門家の方々との打ち合わせ、各種研究集会での交流等が本研究の推進に不可欠であり、その為の旅費、資料費が必要とされる。
|