前年度までに行った微分式系(多様体上の接空間の部分束)の理論、田中理論を用いた微分方程式の幾何学的構造の研究をベースに応用として、フィンスラー幾何学における変分問題の研究を行った。 微分式系を用いたフィンスラー幾何学の研究はS.S.Chern 氏、P. Griffiths 氏、R.Bryant 氏らによって進められてきた微分幾何学の研究の本流の一つである。また、フィンスラー幾何学は近年、metric space やタイヒミュラー空間との関わりなど、大域的な研究が盛んに行われてきているが局所的な性質もまだ明らかになっていない面白い部分が多くあり、申請者は東海大学のサバウソリン氏と共同で微分式系を用いたフィンスラー幾何学の研究を行っている。 リーマン幾何学において測地線(接ベクトルが曲線に沿って平行、または直交ベクトルが曲線に沿って平行と言っても同じ)は測地的曲率が0で特徴付けられる。フィンスラー幾何学においても接ベクトルが曲線にそって平行な曲線は測地的曲率で特徴付けられることが知られている。一方で、フィンスラー曲面内の直交ベクトルが曲線に沿って平行な曲線がガウス・ボンネ型定理の研究を通じて重要な曲線であることが明らかになってきた。そのような中、フィンスラー曲面内の直交ベクトルが平行な曲線の変分問題的な性質の研究を行った。その際に直交ベクトルが平行な曲線に対応する“測地的曲率”を定式化し古典的な変分法を用いるとオイラー・ラグランジュ方程式が複雑で扱いにくいことが分かった。それに対し微分式系を用いた変分問題の定式化を用いた所、その複雑さを回避してオイラー・ラグランジュ方程式を解くことが出来、その解はリーマン幾何学的なものとは異なり考えているフィンスラー曲面の曲率に依っていて“測地的曲率”が0とは限らないことを明らかにした。 上記成果を論文にして投稿中である。
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