研究課題/領域番号 |
23740055
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
野原 雄一 香川大学, 教育学部, 准教授 (60447125)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 完全可積分系 / トーリック退化 |
研究概要 |
1. Grassmann多様体上の完全可積分系とその退化植田一石氏(大阪大学)と共に、Grassmann多様体およびそのシンプレクティック商として得られる多角形のモジュライ空間(以下、多角形空間と呼ぶ)上の完全可積分系について研究している。Grassmann多様体と多角形空間は複数のトーリック多様体への退化を持つが、昨年度はそれらの退化の下でそれぞれの完全可積分系がトーリック多様体の標準的な完全可積分系(運動量写像)に変形できることを示した。今年度はそのGrassmann多様体の退化が"良い特異点"を持つことを示した。その応用として、完全可積分系のトーラスファイバーのポテンシャル関数を、ある凸多面体の組み合わせ的なデータから計算した。(多角形空間の場合にはこれは正しくないことが分かっている。)2. 放物的ベクトル束のモジュライ空間上の完全可積分系射影直線上の階数2の放物的ベクトル束のモジュライ空間は適当な条件のもとで("重み"が小さい場合)多角形空間と同型であることが知られている。また、放物的ベクトル束のモジュライ空間上にはGoldmanによって完全可積分系が構成されている。今年度は、その完全可積分系の構造も込めて放物的ベクトル束のモジュライ空間と多角形空間が同一視できることを証明した。その応用としてGoldmanの完全可積分系もトーリック退化を持つことが分かる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Grassmann多様体に対しては、計画通り複数の完全可積分系とそれらのポテンシャル関数の間の変換を具体的に求めることができた。放物的ベクトル束のモジュライ空間上の完全可積分系については、一般のRiemann面の場合の進展はなかったが、その代わりに射影直線の場合のトーリック退化に関する結果を改良することができた。この結果はより一般のRiemann面の場合を調べる際にも用いることができると思われる。勾配ベクトルの解析については今年度は進展はなかった。これに関してはもともと複数年で研究する計画であり、今後も引き続き課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた射影直線の場合の放物的ベクトル束のモジュライ空間上の完全可積分系に関する結果を用いて、より一般のRiemann面の上のベクトル束のモジュライ空間上の完全可積分系の退化を考える。旗多様体上の完全可積分系やK3曲面上のLagrangeファイブレーションなど、その他の項目については当初の計画の通り研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備費、消耗品については主に研究テーマに関わる文献など研究に必要な消耗品に、旅費は研究集会参加と研究打ち合わせのために使用する。予定額は当初の計画の通りである。
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