研究課題/領域番号 |
23740060
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
黒須 早苗 東京理科大学, 理学部, 助教 (70457844)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アファインはめ込み / tt*構造 / 多重調和写像 / (パラ)ケーラー多様体 |
研究概要 |
1.概積・概複素構造を持つ多様体の部分多様体について、複素および概積構造とそれに適合したアファイン接続を持つ多様体からの、ある性質を満たすアファインはめ込みの特徴付けや更に適合した計量を持つ(パラ)ケーラー多様体、概積リーマン多様体の部分多様体論についての次のような結果を得た。(1)複素多様体からのアファインはめ込みで誘導接続が完備であり、そのアファイン基本形式が(反)エルミート形となるものは、アファイン基本形式の零化空間の余次元2、4の場合に柱状または、線織的となる。特に、超曲面の場合は柱状になる。(2)概積構造を持つ多様体からのアファインはめ込みで誘導接続が完備であり、アファイン基本形式が(反)エルミート形となるものは、そのアファイン基本形式の零化空間が余次元1、2の場合に柱状または線織的となる。(3)完備パラケーラー多様体からのパラ多重調和等長超曲面は柱状である。パラケーラー多様体からの等長はめ込みは、平坦でなければパラ多重調和性と極小性が同値となるのでこれは極小部分多様体に関する結果と見ることも可能である。2.筑波大学の守屋克洋氏との共同研究において、リーマン面から球面への調和写像を用いて、tt*束を構成した。これは既に知られている多重調和写像を用いた構成法とは異なるものである。3.幾何学シンポジウム等の研究集会に参加し、情報収集を行った。特に11月には中国・清華大学に出張し、研究集会に参加、また清華大学、北京大学でtt*構造に関連した講演を行った。また同大滞在中は同大教授馬輝氏との研究交流を行い、特殊ラグランジュ幾何学とtt*構造との関係について議論を行った。本年度はこれらの新しい関連についても研究を進めたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は東日本大震災に伴う研究集会の中止、延期や予算の確定時期の遅れにより前期の予定が計画通りに進まず、研究交流や情報収集を予定通りに行うことができなかった。しかし、10月以降は例年通りに研究集会等も行われ、研究交流を行うことができ、11月には清華大学への短期出張を行い、同大教授馬輝氏との共同研究や、ワークショップへの参加、また清華大学、北京大学のセミナーでの講演を行うことができた。アファインはめ込み、(パラ)ケーラー多様体の部分多様体の幾何学については、統一的に研究を行い、部分多様体のアファイン(第二)基本形式の零化空間を用いた特徴付けについて結果を得ることができた。この結果は(パラ)ケーラー多様体からの(パラ)多重調和はめ込みについての結果を含んでおり、既存の結果の一般化と捉えることができる。しかし、光的部分多様体やローレンツの幾何学との関連については、研究を進めることができなかった。tt*構造の幾何学については、球面からの調和写像を用いたtt*束の構成について、筑波大学の守屋克洋氏と共同研究を行い、新しい結果を得ることができた。また、tt*構造とアファインはめ込みとの関連については、24年度も継続して研究を行う予定である。これらを踏まえて、外部との研究交流や新しい概念を学ぶ、という点では当初の計画からは遅れているが、アファインはめ込みによる部分多様体論を始め、いくつかの結果を得ることができたという点では、ある程度進展していると捉えており、24年度にさらに研究を行うことで、当初の予定を達成することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は東日本大震災による研究集会の中止、延期や予算の確定が遅くなったことから、前期(~9月)の予定が特に研究交流や情報収集が研究計画通りに進まず、主に出張の為の旅費を使わなかったことから、次年度使用額が発生した。今年度はこの研究費も含め、主に昨年度実施できなかった研究交流の為の出張や、セミナーの開催の為の費用、セミナー参加者の為の旅費等として、研究費を使う予定である。研究内容については昨年度からの継続として、1.アファインはめ込みによる部分多様体論を基本とした、等長はめ込み等の部分多様体の研究について、特に光的部分多様体や退化する部分多様体について研究。2.tt*束構造の構成と数理物理学の諸分野との関連についての共同研究。3.接束がtt*構造を持つ多様体のアファインはめ込み等の部分多様体を用いた特徴付け。4.統計多様体の構造とtt*構造、或いは概複素、概積構造との関連。を主たるテーマとする。これらの内容について、本年度は研究交流やこれまで得られている結果の発表を中心として次のような研究活動を予定している。・研究集会等へ参加して情報収集を行う。・勉強会、研究集会の開催。・共同研究。・研究交流と研究結果の発表の為の出張。また、当初計画になかった「統計多様体の幾何学」を研究するにあたり、統計多様体の部分多様体論や、情報幾何学についての基本的事柄についてもセミナーに参加するなどして研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は予定していた研究の他に昨年度行うことができなかった研究交流、共同研究も行う予定である。消耗品費はtt*構造の幾何学を含むの数理物理学や曲面論、部分多様体論だけでなく、統計多様体と関連した情報幾何学についての書籍や資料を購入するために主に用いる予定である。国内、海外旅費は研究代表者の国内及び海外出張の為と勉強会、研究集会の参加者の旅費に当てられる予定である。また、研究集会及び勉強会を開催する際の講演者の旅費、謝金や資料の印刷等に用いられる予定である。
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