研究課題/領域番号 |
23740061
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
市原 一裕 日本大学, 文理学部, 准教授 (00388357)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トポロジー / 3次元多様体論 / デーン手術 |
研究概要 |
最終的な研究目的である「3次元球面内の交代結び目に沿った例外的デーン手術の完全分類」にむけて,最初のステップである「ツイスト数が8以下の交代図式を許容する交代結び目の特徴付け」の研究を行うことが当該年度の目的であった.これは次年度以降の研究の基礎にあたるものであり,この部分のみで論文等の研究成果として発表できるものではないが,着実に研究を進めることができている.また研究課題に関連して,いくつかの結果を得ることができたので,下のように論文として発表した:「Surgical distance between lens spaces(斎藤敏夫氏との共著)」では,レンズ空間と呼ばれる3次元多様体同士を結ぶ双曲結び目に沿ったデーン手術が非常に豊富であることを示した.「Boundary slopes and the numbers of positive/negative crossings for Montesinos knots(水島滋氏との共著)」では,3次元球面内のモンテシノス結び目外部空間内の本質的曲面の境界成分とその結び目ダイアグラムの正/負の交点数との間に関連があること示した.「Exceptional surgeries on (-2,p,p)-pretzel knots(鄭 仁大氏,蒲谷祐一氏との共著)」では(-2,p,p)型プレッツェル結び目に沿った例外的デーン手術の完全分類を与えた.「On the maximal number and the diameter of exceptional surgery slope sets」では,双曲結び目に沿った例外的デーン手術スロープ集合の最大位数と最大直径の間に関係があることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り,研究課題に直接関連した研究成果論文として表してはいないが着実に進められている.また関連する研究,主には,3次元多様体内の双曲結び目に沿った例外的デーン手術の研究,モンテシノス結び目外部空間の本質的曲面の境界スロープの研究,について,いくつかの研究成果を得て,論文として発表できている.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には研究実施計画に沿って研究を推進していく予定である.但し,当該分野(3次元多様体論)において,50年以上未解決であった仮想ハーケン予想,さらにそれを含む,仮想ファイバー予想が,I. Agol氏によって解決されるなど,近年,著しい発展が見られている状況を受けて,一部予定を変更する.具体的には,海外からの研究者招聘について予定を変更し,招聘研究者を増加させる.このため今年度に使用予定の物品費・旅費の一部を使用せず,次年度に使用する予定とした.また計画に記載している以上にコンピュータ援用による研究を進めることも検討している.これは関連する研究者による研究成果(Exceptional Dehn surgery on the minimally twisted five-chain link. Bruno Martelli, Carlo Petronio, Fionntan Roukema. Preprint (arXiv:1109.0903) )が,本研究課題の推進に利用できることが期待されるからである.
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次年度の研究費の使用計画 |
主には,コンピュータ利用の研究のためのノート型コンピュータの購入,情報収集やこれまでに得られた研究成果の発表の為の国内研究集会への参加旅費,国内の関連する研究者からの専門的知識の提供に関する謝金,および,海外からの研究者招聘の為に使用する予定である.このうち,コンピュータ利用研究のためのノート型コンピュータ購入については,近年のコンピュータ性能の上昇を受けて,予定より高スペックのものの購入を検討中である.また上記「今後の研究の推進方策」でも述べたように,近年の当該分野における著しい発展を受けて,海外招聘に関しての使用を予定より増やすこととしている.具体的には現時点では,Ian Agol (UC Berkeley), Danny Calegari (Cambridge University), Craig Hodgson (University of Melbourne)(敬称略)を含む複数名の研究者の招聘を計画している.
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