研究概要 |
結び目とは閉じた紐のことであり,紐が2つ以上有限個あるときは絡み目と呼ぶ。良い3次元の図形である、向き付け可能な閉3次元多様体(以下3次元多様体と呼ぶ)は、平べったい紐、すなわち帯状の結び目や絡み目で表示される。2つの3次元多様体が同値であることは、それぞれに対応する2つの結び目を使った表示が、ある2種類の変形操作で移り合うことと同値である。本研究では、研究課題「3次元多様体の量子不変量のカテゴリー化」に向けてこの2種類の変形操作に関して、結び目の量子不変量を導くホモロジー群がどのような振る舞いをするかを詳しく調べた。3次元多様体の量子不変量としてWitten-Reshetikin-Turaev不変量を考え、対応する結び目の量子不変量であるジョーンズ多項式及びその一般化である色つきジョーンズ多項式を考察した。研究成果を具体的に述べるため、ジョーンズ多項式を導くカテゴリー化であるホモロジー群をKh(J)、色つきジョーンズ多項式を導く、報告者による新しいカテゴリー化であるホモロジー群をKh(CJ)と書き、上記の3次元多様体を変えない局所的な変形操作をK1、K2と書くことする。主に次の3つの新結果を得た。 [1] K1はKh(J)の次数がある規則でスライドすることに対応する。 [2] いくつかのKh(CJ)を足し上げたもの(直和)はK2で不変である。 [3] 1本の紐をn重平行に増やしたKh(J)を作る、(複体と呼ばれる)幾何的対象をCKh(J, n)と書くとき、CKh(J, n)からCKh(J, n-2)への関手(ある対象から別の対象に類似の構造を移すもの)を構成した。
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