研究課題
本研究の目的は、偏極射影代数多様体における種々のGIT-安定性の間の関係や諸性質について、特殊計量の存在問題の観点から明らかにするものである。本年度は、前年度に引き続き偏極多様体の強K-安定性の研究を継続・発展させた。特に、強K-安定性と漸近的Chow-Mumfordの間の関係に関する大阪大学の満渕俊樹氏との共同研究に力を注ぎ、偏極射影代数多様体の強K-安定性が漸近的Chow-Mumford安定性を導くことを相対安定の場合も含めて完全に証明した。強K-安定性とはDonaldsonやTianのK-安定性をさらに強くした安定性概念で、偏極多様体における特殊計量、特に定スカラー曲率ケーラー計量やextremal metricの存在問題の観点から導入されたものである。また漸近的Chow-Mumford安定な偏極多様体にはBalanced metricの列が存在することが知られているが、この列が適当な意味で収束するとき、極限として定スカラー曲率ケーラー計量が得られることがDonaldsonによって知られている。これらのことから、我々の結果が定スカラー曲率ケーラー計量やextremal metricの存在へ大きな応用を持つことが期待できる。我々の結果は共著論文“Strong K-stability and asymptotic Chow-stability”として2015年3月にBirkhauserから出版された書籍“Geometry and Analysis on Manifolds: In Memory of Professor Shoshichi Kobayashi”で確認することができる。また、以上の結果およびこれまでに得られた研究成果を研究集会で発表し、我々の研究の周知を図った。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Geometry and Analysis on Manifolds, Progress in Mathematics
巻: 308 ページ: 405-411
10.1007/978-3-319-11523-8_17