研究課題/領域番号 |
23740074
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 武彦 京都大学, 数理解析研究所, 研究員(グローバルCOE) (30546429)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 数値的検証法 / 線形積分作用素 / 事後評価 / 区間演算 |
研究概要 |
(1) 非線形積分方程式の線形化作用素に対する作用素ノルムの定量的な評価方法の開発に取り組んだ.線形化作用素の作用素ノルムを利用して,非線形楕円型方程式の解の存在を検証する手法は 1992 年に Michael Plum 教授によって提案され,2005 年に中尾充宏教授らによってその効率化が果たされている.この検証手法は厳密解の検証精度,数値計算速度共に良好な成果を上げており,現在最も注目すべき検証手法の一つとなっている.従って,線形化作用素に対する作用素ノルムの定量的な評価を得る事は,非線形方程式の解を検証する際の第一歩となる.今年度は主に非線形常微分方程式系の線形化作用素に対する逆作用素(積分作用素)の作用素ノルムの定量的な評価方法の開発に取り組み,新たな評価方法の提案を行った.また,提案手法は従来手法よりも精度が良く,非線形方程式の解の検証に適用できうる物であると期待される.(2) 並列化区間演算ライブラリの開発に取り組んだ.微分方程式や積分方程式の解を検証する際に,区間演算と呼ばれる計算手法が必要となる.区間演算の計算量は近似計算の数倍になるため,解の存在検証プログラムにおいてほとんどの計算時間が区間演算に費やされる.しかし,現在公開されている区間演算ライブラリはいずれも逐次計算を前提としており,現在の計算機環境に合った物とは言い難い.よって,新たに並列化区間演算ライブラリの開発に取り組んだ.また,区間演算には丸め誤差の積み重ねによる区間拡大がしばしば問題となる.この問題を克服する為には,本質的には,計算精度を上げるしか無い.そこで,藤原宏志先生らと共同で,多倍長区間演算にも対応する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的な解析,プログラミング共に順調に進展していると思われる.理論的な解析については線形化積分作用素に対する作用素ノルムの評価を得る手法を提案し,それが論文として出版された.プログラムは並列化区間演算の仕様が決まり,現在線形代数計算ライブラリの作成中である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究も当初の研究計画通りに研究を推める.今年度得られた作用素ノルムの評価を元にして,非線形方程式の解の存在を検証する手法を開発する.これと平行して並列化区間演算ライブラリの開発を推める.
|
次年度の研究費の使用計画 |
並列化区間演算ライブラリの仕様策定に際し,fused multiply-add (FMA) と呼ばれる積和演算を使用する事を決定した.しかし,今年度は FMA を利用可能な CPU を搭載したワークステーションが見当たらなかったので,今年度予算の多くを次年度に繰り越した.2012年夏以降にこの様な製品が販売されると期待されるので,この時期にワークステーションを購入する予定である.それ以外の研究費の使用計画は当初の計画通りとする.具体的な用途は,スーパーコンピュータ利用料,ノートパソコン,ソフトウェアの購入,国内外旅費,外国語論文の校閲費である.
|