(1) 本研究で対象とする特異性を持つ積分方程式はそれと同値な特異性を持つ常微分方程式が存在する.当初計画していた二重指数型数値積分公式を用いた積分方程式の解の検証方法は,同様の研究を行っている研究者が国内に居る事がわかり,研究対象を常微分方程式に変更した.線形楕円型作用素の可逆性とその評価はこれまでにも知られているが,それを精査する事で逆作用素の若干の評価の改善に成功した.また,これを元に楕円型作用素に摂動を加えた楕円型作用素の評価を得る手法を考案した.これはラプラシアンのような可逆性や逆作用素ノルムが既知の作用素から徐々に摂動を加えて行き,所望の楕円型作用素に対する可逆性とその評価を得るものである.現在では特異性の現れない所までの摂動に対しては上手く機能している.この事実から通常用いられるの関数空間には本研究で対象となる微分方程式の解が存在しない可能性がある.これに対応する為には例えば重み付き関数空間で解を探す必要があるが,この空間は楕円型作用素の理論では扱えず,従来の精度保証付き数値計算の理論が適用できない.本研究で対象とした最高階微分に特異性が入った微分方程式を扱うためには精度保証付き数値計算の理論の基礎的な部分から構築し直す必要がある事がわかった.
(2) 線形放物型作用素の逆作用素に対する評価方法に取り組んだ.また,その評価を用いた非線形放物型初期境界値問題の解に対する精度保証付き数値計算法の構築に取り組んだ.従来手法は放物型作用素を半離散化した常微分作用素に対する可逆性を検証していたが,この常微分作用素は固い方程式となるため,効率が悪かった.これに対し,提案手法では放物型作用素に対する離散化誤差評価を用いる事で従来手法よりも効率的な評価が可能となった.本研究成果は論文として公表した.
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