研究課題/領域番号 |
23740076
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
酒井 拓史 神戸大学, その他の研究科, 講師 (70468239)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 多国籍 / 公理的集合論 |
研究概要 |
交付申請書で挙げた,(B)「アレフ2に関する反映原理とアレフ1上のイデアルの関係」,(C)「アレフ2より大きな基数に関する反映原理の無矛盾性」について研究を行った.(B) ウィーン大学の Jakob Kellner 准教授とともにヘブライ大学を訪問し,同大学の Saharon Shelah 教授および Menachem Magidor 教授とともに,具体的ないくつかのイデアルに対して,そのプレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかどうかを調べた.その結果,弱閉非有界イデアルなど,新たにいくつかのイデアルに対して,そのプレシピタス性を導く反映原理の定式化に成功した.一方,非有界関数から自然に定義されるイデアルに関しては,そのような反映原理がうまく定式化できず,このイデアルについては,プレシピタス性を導く反映原理の定式化が不可能なのではないかという予想に至った.(C) アレフ2に関する既存のいくつかの反映原理に対して,より大きな基数への一般化の無矛盾性を調べた.その結果,FRP,グラフの色付け数の反映原理および半定常性反映原理については,アレフ2より大きな基数に関するものへの(そのままの形での)一般化が無矛盾であることが分かった.また,反映原理の典型的な帰結のひとつにチャング仮説があるが,アレフ2に関する反映原理から帰結されるチャング仮説と,より大きな基数に関する反映原理から帰結されるチャング仮説の比較を行った.その結果,弱スクエア原理と呼ばれる無限組み合わせ論の命題との無矛盾性において,両者の間には大きな違いがあることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は前項で挙げた (B) と (C) の研究を遂行する予定であり,おおむね予定通りに研究が進んだ.(B) 平成23年度は具体的なイデアルに対して,そのプレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかどうかを調べる予定であった.当初は,非有界関数から定義されるイデアルに対しても,プレシピタス性を導く反映原理が定式化できると予想していたが,このイデアルは他のイデアルとは少し趣が異なり,当初の予想が正しくなさそうであることが分かった.また,当初はシグマ1論理式で定義可能なイデアルに対しては,プレシピタス性を導く反映原理が定式化できるという一般的な予想を持っていたが,その予想も変更を要しそうで,定義可能性以外に条件が必要でありそうなことが分かった.非有界関数から定義されるイデアルについての更なる研究が,一般的事実の解明に有効なのではないかと期待している.(C) FRP,グラフの色付け数の反映原理および半定常性反映原理は,大きな基数への一般化が無矛盾であることが分かり,これはひとつの大きな進展であると考えている.チャング仮説とスクエア原理の無矛盾性に関する結果も,反映原理の一般化の無矛盾性を調べる上で大きな手がかりとなることが予想される.また,積極的に海外の研究集会に参加したことで,UCLA の Itay Neeman 教授が強制法公理を大きな基数へ一般化する新たな手法を開発したという情報を得た.この手法が反映原理のより大きな基数への一般化にも応用できるのではないかと期待している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き (B) と (C) の研究を進めるとともに,交付申請書で挙げた (A)「アレフ2に関する反映原理と巨大基数の関係」の研究に着手する.(B) まず非有界関数から定義されるイデアルのプレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかどうかを調べ,それをもとに,一般にどのようなイデアルに対して,プレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかを考察する.特に,非有界関数から定義されるイデアルを参考に,定義可能性以外にどのような条件が必要になるかを見極める.この研究には,筑波大学の塩谷真弘准教授も興味を持っており,上述の Shelah 教授や Kellner 准教授に加えて,塩谷准教授とも議論をしながら研究を進める.(C) Itay Neeman 教授による強制法公理の一般化手法を応用し,反映原理のより大きな基数への一般化を試みる.中でも,イデアルの飽和性と関係の深い強反映原理について,どのように制限したものの一般化が無矛盾であるかを考察していく.Neeman 教授とは,10月にカナダのフィールズ研究所で開催されるワークショプで顔を合わせる予定であり,そこで議論をしたいと考えている.(A) コンパクト基数公理から強制法を用いて定常反映原理の無矛盾性を得ることができるかどうかなど,強制法を用いてどのような巨大基数公理からどのような反映原理の無矛盾性が得られるかを調べる.これには定常集合分割などの無限組み合わせ論を用いた議論が有効そうである.無限組み合わせ論をリードするパリ第7大学の Boban Velickovic 教授や Stevo Todorcevic 教授らと議論をしながら研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度研究費のうち 94,095 円が平成24年度にまわされるが,これは平成24年3月末から4月最初にかけて,年度をまたぐアメリカ出張をしたことによる.3月末分はすでに支払われたが,この 94,095 円を4月最初の分に当てる.平成24年度も研究費の大部分を旅費として使用する予定である.平成24年度は7月から12月にかけて,カナダのフィールズ研究所で公理的集合論を主題とした国際研究プログラムが予定されており,世界中から研究者が集まる.特に前項までに述べた,Itay Neeman 教授,Boban Velickovic 教授,Stevo Todorcevic 教授の参加が予定されている.また,そのプログラムでは,9月,10月,11月にそれぞれ一週間程度のワークショップが予定されているが,そのうちの10月と11月のワークショップで招待講演を依頼されている.フィールズ研究所から一部旅費が支給されるが,その不足分に科学研究費補助金を利用したいと考えている.海外では,9月にフランスの CIRM で開催される公理的集合論の研究集会にも招待されており,その前後でパリ第7大学を訪れる予定である.その旅費の一部としても研究費を使用する.国内でも,12月に京都大学数理解析研究所で公理的集合論の研究集会が予定されており,これをはじめとするいくつかの研究集会に参加する.また筑波大学の塩谷真弘准教授や名古屋大学の薄葉季路助教をはじめとした研究者訪問/招聘を行う予定である.また,平成23年度に購入ができなかったノートパソコンを,平成24年度に購入したいと考えている.
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