研究課題/領域番号 |
23740076
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
酒井 拓史 神戸大学, その他の研究科, 講師 (70468239)
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キーワード | 国際情報交換 / 国際研究者交流 / 公理的集合論 |
研究概要 |
交付申請書で挙げた,(A)「アレフ2に関する反映原理と巨大基数の関係」および (C)「アレフ2より大きな基数に関する反映原理の無矛盾性」について主に研究を行った. (A) 到達不可能基数をプロパー強制法でアレフ2に崩壊したときにプロパー強制法公理が成り立っていれば,もとの到達不可能基数は超コンパクトであることが,Viale と Weiss によって示されているが,同じことがアレフ2の定常性反映原理については成立しないということを示せた.プロパー強制法は連続体仮説の否定を導き,一方で定常性反映原理は連続体仮説と無矛盾である.平成24年度の研究で,アレフ2に関する反映原理と巨大基数の関係では,連続体仮説やマルティンの公理が鍵になりそうなことが分かった. (C) カリフォルニア大学の Itay Neeman 教授を中心に,プロパー強制法の有限台反復の手法が発展させられ,これまで考えられてきた強制法公理の,より多くの稠密部分集合族に対するものへの一般化が進められている.この手法はアレフ2より大きな基数に関する反映原理の無矛盾性に対しても有効であることが予想される.このプロパー強制法の有限台反復の手法について最新の情報を収集し,反映原理への応用を試みた.また,アレフ2に関する様々な反映原理と弱スクエア原理の関係を整理し,より大きな基数への一般化可能性と弱スクエア原理が関係しそうであることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書で挙げ,「研究実績の概要」でも挙げた,(A) および (C) の研究については,完成には至っていないものの,いくつかの新たな成果が得られており,おおむね順調に進んでいる. 交付申請書では (B)「アレフ2に関する反映原理とアレフ1上のイデアルの関係」の研究も挙げたが,この研究がやや遅れている.平成24年度は,非有界関数から定義されるイデアルに対して,プレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかどうかを解決する予定であったが,これが解決に至らなかった.(B) の研究に関しては,現在停滞中である.
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書で挙げた (A), (B), (C) の研究の完成を目指す. (A) コンパクト基数公理の仮定のみから,アレフ2に関する定常性反映原理をどのような強制法で強制できるか,特にセミプロパー強制法で強制できるかどうかを解決する.これまでの研究により,セミプロパー強制法では強制できないことを予想している.パリ第7大学の Boban Velickovic 教授やトロント大学の Stevo Todorcevic 教授らと議論しながら研究を進める. (B) 引き続き,非有界関数から定義されるイデアルに対して,プレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかどうかを調べ,さらにこれをもとに,一般にどのようなイデアルに対してプレシピタス性を導く反映原理が定式化できるかどうかを考察する.この問題にはヘブライ大学の Menachem Magidor 教授にも興味を持ってもらっており,Magidor 教授とも議論しながら研究を進める. (C) Itay Neeman 教授を中心に発展させられている,プロパー強制法の有限台反復の手法を応用し,どのような反映原理のアレフ2より大きな基数への一般化が無矛盾であるかを調べる.Neeman 教授の手法は,上述の Velickovic 教授や Magidor 教授らによってセミプロパー強制法の有限台反復に拡張されており,この手法が有効であると予想している.彼らと議論をして研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでと同様,平成25年度も研究費の大部分を旅費として使用する予定である. 7月と9月にウィーン大学で公理的集合論の研究集会が開催され,双方に招待されている.これらの研究集会には上述の Neeman 教授,Magidor 教授,Velickovic 教授をはじめ,公理的集合論の研究者が多く集まる.この二つの集会に参加し,参加者と議論を深める.また1月にはドイツの Oberwolfach 研究所で,公理的集合論の研究集会が開催されるが,これにも招待されている.この研究集会は公理的集合論をリードする研究者が集まるもので,ウィーン大学の集会の上述の参加者に加え,Todorcevic 教授らも参加する.ここではこれまでの研究成果を発表するとともに,本研究で残された課題について,参加者と議論する. 国内でも公理的集合論の集会が,京都大学や島根大学などで複数開催される予定で,これらにも参加するとともに,海外から研究者を招聘し,議論をしたいと考えている. また,平成25年度中に PC を一台購入し,また集合論関係の書籍も購入する予定である.
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