研究概要 |
本研究の目的は, 非線形楕円型偏微分方程式の解の部分多様体への集中現象, 反応拡散系 における空間的に集中した解の時間振動現 象, 非線形波動方程式の自由振動共鳴現象など,非 線形偏微分方程式における種々の集中・振動現象を, 変分法, リャプノフ・シュミ ットの縮約法, 分岐理論, 不変多様体理論, 漸近展開法などの手法により解明することである. 非線形シュレディンガー方程式は, 原子気体のボーズ・アインシュタイン凝縮や, ある非線形光学材料における光の伝播の記述など, 物理の様々な分野で現れる方程式である. 凝縮体の粒子はポテンシャルにより小さい領域にトラップされるため, 粒子数密度が小さい 領域に集中した状態が安定に存在する.この安定した凝縮体の基底状態は, 非線形シュレディンガー方程式の定在波解を求めることにより得られ,この基底状態を求める問題は, 非線形楕円型偏微分方程式の問題に帰着する. また, あるパラメーターが非常に小さい場合,すなわち, 半古典状態と呼ばれる定在波解の最も特徴的な性質は, 解の集中現象が生じることである. ポテンシャル関数の零点の連結成分が複数あり, その1つ1つが, コンパクトで滑らかな部分多様体である場合に,それぞれの多様体のまわりに集中した解を構成するためには,法バンドルが自明なframed manifoldであるという仮定が必要であることがわかり,その仮定の下で,Fermi座標系におけるリーマン計量の成分のテイラー展開を計算し,微小パラメーターを0に近づける特異摂動問題に対する近似解を構成することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
特異摂動問題に対して近似解のまわりでの線形化固有値問題の解析に技術的な問題があることがわかったため,共鳴が起こっている固有値に対応する固有関数の展開の計算を修正していく. また,時間遅れを持つ反応拡散系の線形化固有値問題に対しては,空間的に集中した定常解のまわりでの線形化固有値問題において, 固有値の時間遅れパラメーターに関する依存性を調べ, 非定数定常解の安定性・ 不安定性, およびホップ分岐について解析していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に関する最新の研究動向調査をし,海外の世界最先端の研究の流れをつかむ必要がある. そのため, 海外から外部研究者の招聘を して, 活発なディスカッションや意見交換をし, 研究を深く進めていく. 平成25年度に行われる学会に合わせ,新たに海外から研究者を招聘する必要が出たため, 本年度の研究費の一部を次年度に使用することとなった. また,新たなアイデアを発見し,研究を発展させるため, 研究集会に積極的に参加する.また,研究打ち合わせや研究成果発表のために も, 国内外で行われる研究集会や学会に参加する. さらに, 研究の資料収集および研究成果発表のためパソコンや書籍の購入費,および 通信費や論文別刷費用などが必要となる.
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