研究課題/領域番号 |
23740080
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 浩一 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30380687)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | モデルリスク / 数理ファイナンス / 金融工学 / リスク管理 / リスク測度 / デリバティブ |
研究概要 |
本年度は多期間リスク測度問題,デリバティブのリスクヘッジ問題の研究に重点的に取り組んだ.1.多期間リスク測度問題リスク管理問題において,重要な役割を演じる一期間リスク測度の多期間化に関する研究成果を論文として整理し,国際学術誌に投稿した.論文の主な結果は次の通りである. (1)従来の強時間整合性を拡張した弱時間整合性を導入し,一期間リスク測度の実用的な多期間化を可能にした.(2)リスクシナリオ集合が適当な条件を満たすとき,弱時間整合性が満たされることを示した.(3)弱時間整合性,計算効率性を兼ね備えたテール・バリュー・アット・リスクの多期間化手法を示した.2.デリバティブのリスクヘッジ問題モデルリスクが存在する市場を前提にデリバティブのリスクヘッジ問題に取り組んだ.本年度は,ヘッジ失敗確率に制約のある部分リスクヘッジ問題を考え,株式デリバティブの研究を中心に研究を行った.主な研究成果は次の通りである.(1)最小ヘッジコストは期待値の最大値最小化問題として表現できることを示した.(2)デリバティブの最小ヘッジコスト問題は2種類の偏微分方程式の解に帰着できることを示した.(3)2種類の偏微分方程式の解の性質を明らかにし,第1の偏微分方程式の解は最大ヘッジ失敗確率に関係し,第2の偏微分方程式の解は最小ヘッジコストに関係することを示した. (4)デリバティブの最適ヘッジ戦略は,最小ヘッジコストの偏微分によって表現することができることを示した.(5)偏微分方程式の3項モデルによる離散化手法,解の数値計算手法を示した.なお,本研究の研究成果は,国際会議(Quantitative Methods in Finance Conference (QMF) 2011)で発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に沿って研究を行い,研究成果を国際会議で公表することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに研究は順調に進展しており,予定通り以下の研究に取り組む. 1.多期間リスク測度問題 2.デリバティブのリスクヘッジ問題3.上記研究において必要となる数値計算手法の研究
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は東日本大震災などの影響により,研究集会の日程が変則的であった.それに伴い,研究集会に参加する機会が限定されたため,研究費を次年度以降に繰り越すこととした.情報収集・研究成果発表のために,研究集会に参加することは極めて重要である.繰り越した研究費用は,次年度以降の研究集会への参加費用として活用する予定である.
|