研究課題/領域番号 |
23740086
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坂川 博宣 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (60348810)
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キーワード | 界面モデル / 相転移 / ギブス測度 |
研究概要 |
例えば0度における水と氷といったような相転移が起きている状況で現れる異なる相を分離する境界面の確率モデルで近年活発に研究がなされているものとして∇φモデルが挙げられる。今年度は∇φモデルの時間発展の特別な場合として現れるある種のGauss過程を取り上げ、持続確率の評価に関する研究を行った。 持続確率(persistence probability)とは1次元の確率過程が時刻Tまで一定のレベルを超えないという事象の実現確率であり、Tを無限大に極限を取った時の漸近挙動に興味がある。例えば1次元ブラウン運動や対称ランダムウォークの場合は1/\sqrt{T}のオーダーで減衰することがよく知られている。これは確率論における古典的な問題の1つであり、多くの場合この確率は多項式オーダーで減衰する。近年、さまざまな物理的な問題等に関連していくつかの非マルコフ、非定常な確率過程に対し持続確率の評価の研究がなされている。特に数学的には厳密でないものの、KPZ方程式やEW方程式などの(1+1)-次元界面の時間発展モデルに対し、原点における界面の高さに着目した場合の持続確率の研究が活発であった。 そこで今年度は高次元における界面モデルのひとつである∇φモデルの時間発展においてポテンシャルが2次関数の時に対応する格子上の無限次元Ornstein-Uhlenbeck過程に対し、原点に着目した場合に現れるGauss過程を考え、その持続確率の数学的に厳密な評価を得た。特にその挙動は界面モデルの次元に応じて異なり、高次元では多項式オーダーより速く減衰するという結果を得た。これらの内容は現在、専門誌への投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の相を分離する境界面、いわゆる界面に関連したいくつかの確率モデルを取り上げ、その漸近挙動に関する研究を通して相分離界面に関する数学的な解析を目指すことが主要な研究目的であった。今年度はこれに関連して∇φモデルの時間発展の特別な場合として現れるある種のGauss過程を取り上げ、持続確率の評価に関する結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続いて確率界面モデルの漸近挙動に関する解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り旅費および図書等の消耗品に使用する予定である。
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